『ミステリーのおきて102条』 読了-4

ミステリーのおきて102条 (角川文庫)
ミステリーのおきて102条 (角川文庫)
阿刀田 高
建築の世界で稀に見かける文章に、建築家先生の自慢話的な建築論がある。特に専門誌に多いのだが、そこには簡単な事柄を、ワザと難解な言葉を用いて複雑にし、使ったことも無いような英語を混ぜ、一般の人には逆立ちしたって伝わらないような説明を、とうとうと語って悦に入っている事が多い。まるで難しい言葉を並べれば、それで価値が上がるかのように。本当に優れた人は難しい話を噛み砕き、誰が読んでも分かるように書いている、あるいは語っているような気がする。
阿刀田さんは、有名なミステリー作家であると同時に、有名なエッセイストでもある。個人的な好みで言うと、絶対に絶対にエッセイストとしての阿刀田さんの方が好きだ。(と書くと、作家の阿刀田さんに叱られそうだが)
勿論、推協賞だって直木賞だって受賞されている、凄い凄い作家さんなのだが、それでもやっぱりエッセイストとしての阿刀田さんが好きだ。なぜって、分かりやすいから。
例えば、短編小説を得意とする阿刀田さんは、短編集を作る時に、どんな順番で作品を並べたら、読者に喜んで貰えるかを考える。それを野球における、バッターの打順になぞらえたりする。こう言うのって作家の裏話だから、あまり聞こえて来ないのが本当なのに、ドンドンばらしていく。さすが、阪神タイガー好きの作家は懐が深い!ちなみに有栖川さんも阪神ファンだ(笑)
それにダール好きなのが、また良い。
ロアルド・ダールと言うと、ジョニー・デップが主演した「チャーリーとチョコレート工場」の原作者として有名だが、実はミステリー作家としての方が断然面白い。その辺りの話にも触れている本作は、読んでいて、この上なく楽しかった。
最近は阿刀田作品やダールの作品からも遠ざかっているが、なんだか読みたくなってこさせる一冊でした。