irritation - 刺激

朝から打ち合わせで、小さな賃貸共同住宅の計画案を提出してきた。と言っても、ボリューム・チェックに毛が生えた程度のクオリティだが、まずは一段落。
知り合いの不動産屋さんから依頼された計画で、私にしてみると珍しい仕事。と言うのも、この手の依頼にはあまり手を出さない・・・・と言うか、事務所始まって初めてだったかも?と言うぐらい珍しい事。そう言う依頼を受けたのは心境の変化と言うか、やっていない事にも、たまには興味を示したくなる好奇心と言うか、とにかくそんな気まぐれから。
だが一旦計画を始めると、地方都市における賃貸共同住宅(平たく言うとアパート)の有り方や、アパートオーナーの目論見と建築的な将来性のギャップ、高齢化する社会と先行きの収入低下への不安と言った、様々な社会的背景までもが見えてくるのが面白いし、同時に難しい。いや、面白いと言うと失礼なので、「興味深い」と言い直した方が良いですね。
都市部で持て囃されるデザイナーズ・マンションや、ハイクオリティなアパートの建物を建築雑誌等で見かけることも多いが、それらの建物オーナーの理解・発想と、それ以外の(つまり大多数の)地方都市における「相続税対策」、あるいは「老後の安定収入確保」のための建物計画とは、「似て非なるもの」と言っても過言ではない。つまり計画の企画立案時のスタンスが違うのだ。
例えばロケーションだけに頼ったアパートの場合、住空間の質の確保は大切だが、それ以上に住戸数をひとつでも多く確保する事が優先される事がある。老後の生活が掛かっているとすれば、確かに収益分岐点を下回る事は出来ない。ただしそれは空室率の設定にもよる。また利益追求を考えるあまり、建物自体が安普請になってもいけない。外構だって、それなりの演出は重要だ。敷地面積に対して、MAX×MAXの建物や、レンタブル比最優先と言う計画ばかりを追及する時代は、バブルの時に終わったと思っていたのだが、あの時とは違う理由から、今も成立する考え方なんだと思った。
そう言うことを感じながら計画する仕事は、やっぱりある意味で新しい刺激だし、そんな刺激を感じたのなら、それを次へ繋げたいと思うのですよ、はい。