『黒笑小説』 読了-22

黒笑小説 (集英社文庫 ひ 15-8)
黒笑小説 (集英社文庫 ひ 15-8)
東野 圭吾
『怪笑小説』『毒笑小説』に続く、東野さんの短編小説の第三弾。あとがきで奥田英朗氏さんが「ブラック・ユーモア集」と評されていたが、言い得て妙。
とある文芸賞にノミネートされた作家の発表を待つ間の心の動きと、その取り巻きの編集者の本音を描いた『もう一つの助走』。新人賞を受賞したことで頭に血が上り、仕事を辞めて専業作家になった男の悲哀と、出版社の本音を描いた『線香花火』。その他にも『過去の人』『選考会』と、いずれも作家でないと書けない悲哀に包まれている。
その他には、全ての女性が巨乳に見えてしまう病気になってしまった男の悲劇を描いた『巨乳妄想症候群』や、SF的な匂いのする『モテモテ・スプレー』『臨海家族』など、幅広いジャンルの作品が収録されている。東野さんの引き出しの多さに驚かされつつ、ミス好き・SF好きにも楽しめる一冊。