高齢化社会に対応する為だろうか、家を二所帯住宅に改造したり、もう一部屋だけ増築したいと言ったニーズが増えていると聞く。うちにも同様のご相談を頂く事が多いのだが、実はこの【増築】が、ちょっとばかりややこしいのです。
例えばこんな感じ。
40坪の住宅に、一間の押入れが付いた6帖間(13.25㎡)を増築したいと考えた場合、昔なら、その確認申請を提出し、認可されたら工事して、ハイ出来上がり~!と言う事になったのだが、今はそうはいかない。
増築部分の確認申請を提出するまでは一緒だが、実はその先が違う。まず母屋となる40坪の建物が今の法律に適合している事を調査し、適合していない場合は、それを適合させるように一緒に工事する事が、増築部分を認可する条件となるのだ。これ、文字で読めば簡単そうだけど、じつはどうしてどうして大変な場合もあるのです。例えば24時間換気の義務付けと言うのは、最近の法律で決められたこと。だからちょっと古い家だと、こんな設備は付いてない。それからシックハウスに関する基準。つまり内装材料全てのチェックと、現行法に照らして不適切な材料が使われていた場合、その全てを改修する必要がある。たぶんそれだけでも、ひょっとしたら増築工事の費用を、はるかに超える費用が発生する可能性がある。だから最近の増築工事と言うのは、ちょっと大変な訳です。
勿論、この辺りの手続きを取らずに工事してしまったりすると、設計者も施工者も、場合に拠れば建築主だって厳罰に処せられる。だから納得がいかなくても、増築計画を諦めたりするケースも出てくるのが実情なんです。
ところが、行政はちょっと違う。民間では厳罰に処せられる行為も、行政庁が行う場合は大した騒ぎにはならないらしい。東京都の東久留米市では、市内の学校施設内に倉庫を建てようと計画し、東京都に確認申請の必要性の有無を相談しに行ったそうな。倉庫の規模から、当然確認申請は必要と指導され、おまけに既存建物(この場合、学校校舎の意味だと思うが)に関しては、現行法に適合しているか調査し、適合していない場合は適合させるようにとの指導を受けた。これ、当たり前の話。
ところが東久留米市は考えた。そんなお金は無い、だから黙って建ててしまおうと・・・。
そして倉庫は無断で建てられたが、後日それが発覚し、倉庫は取り壊されましたとな、チャンチャン!
アホだ(笑)
アホなポイントは幾つかあるが、箇条書きにするとこんな感じ。
・確認取るのは当たり前
・既存建物を調査するのも当たり前
・百歩譲って倉庫が公共用途の類なら、なんで計画通知で対応しなかったのか?
(公共施設の場合、手続きに違う物がある)
・建てた費用も、取り壊した費用も全て税金
・誰も責任は取らない(資格剥奪も無ければ解雇さえない)
挙げればきりが無い、「アホのパンドラの箱じゃ~~~」と、彦麻呂なら叫ぶ筈。
知らないでやってしまったなら兎も角(いや、それはそれでマズイのだが)知っててやったと言う事は、明らかな確信犯。これが一番性質が悪い。でも誰にもお咎めはない。
行政庁って、なんかズルイ・・・。