『沖田総司』 読了-46

沖田総司
沖田総司
幕末の動乱期、京都守護職の任に付く新撰組。
その一番隊隊長を勤めた、沖田総司の二十五年の人生を綴った一冊。
新撰組の話は、ドラマや本で概略は知っていましたが、総司ひとりにスポットを当てた本を読むのは初めてだったので、新撰組だけに「新鮮」に読めました(笑)
いや、冗談はともかく、本は良かったです。
今まで総司の哀しさは、病気を患うことで早く死んでしまう哀しさだと思っていたのですが、実はそうではありませんでした。病気を患うことで大切な人たちがひとり、またひとりと離れていってしまう、その孤独の寂しさだと知りました。
昨日まで仲間だった隊士を切り、芹沢局長を切り、兄のように慕った山南の介錯を勤める総司。
一人、また一人と友が死んでいきます。密かに想いを寄せた人とも離れ、江戸に戻った総司の看病をしてくれた姉も離れ、近藤さんと離れ、そして土方さえも離れていく。
たった一人きり、誰も知らない民家の離れで死んでいく。その憐れは、武士として戦場で死ねなかった事への憐れであり、誰も知らない場所で、たった一人で死んでいく憐れ。同じ死ぬなら、せめて土方と一緒に戦場で死なせてやりたいと思いながら読む最後の下りは、あまりにも静か、あまりにも不憫です。せめて今際の際に籠から逃がしてあげた二羽の鳥が、寄り添いながら飛び立つ事を、祈るばかりの読後でした。