『古今東西「奇想建築」ミステリー』 読了-47

古今東西「奇想建築」ミステリー (PHP文庫)
古今東西「奇想建築」ミステリー (PHP文庫)
書名の表すとおり、古今東西の有名建築物に隠された謎を解き明かすと言うもの。世界中の様々な建物が題材で、国内からは法隆寺・厳島神社・白川郷をはじめ、東京駅や築地本願寺、その他たくさんの幅広い建物の謎が提示されています。勿論、外国の建物も数多く掲載されています。
こう言う本は大好き!
一つ一つの謎が、「なるほど、そう言われてみれば実に不思議だ」と、合点がいくものばかり。
それを歴史的背景や建築家の心情、発注者の事情や建設当時の宗教観と言った様々な角度から、紐解いていく作業は実に面白い。が!、それ故に残念な事は、掲載数が多すぎる事。
つまり一つ一つの謎に対する解明が、アッサリしすぎているような気がしたのです。もっと深く、もっと幅を広げて検証していく事は可能だと思うのに、それぞれを簡潔にまとめているので、物足りなさを感じてしまいます。また建物の建つ場所や、建物自体の写真と言った画像がほとんどないので、知らない建物や、知っているけど、どの部分を指して謎と考えているのかが分からない建物もあり、若干のフラストレーションが溜まります。
240ページ足らずの中に、65の建物が掲載されているので、一つの建物に割けるページ数は長い物で4~5ページ。短い物では3ページ足らず。これでは謎の提示と、その解答を検証するには短過ぎます。もっと絞り込んで、一つの建物を深く切り込んでいったら、もっと面白かったと思います。
たとえば中国の故宮の不思議を紹介しているのですが、一瞬「故宮って何処だっけ?」と考えました。良く考えれば天安門広場の奥にそびえ立つ、中国最大の宮殿の事だと思い浮かぶのですが、小さな写真でも良いので掲載されていれば、もっと分かりやすかったと思います。ちなみにこの故宮、敷地全体では72万㎡ほどあり、そこに建つ建物も15万㎡。部屋数にして10000室ほどありますが、ここにはトイレと食堂がありません。さてなぜでしょう? 興味のある方は、どうぞお読み下さい。
面白い本だっただけに、残念な点も目に付きましたが、それでも視点の感性や本の趣旨は大好きなジャンルでした。

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