『水の迷宮』 読了-18

水の迷宮 (光文社文庫)
水の迷宮 (光文社文庫)
大勢の人出で賑わう羽田国際環境水族館。その館長宛に届いた、謎の「携帯電話」。その携帯に届いたのは、館内の展示生物を攻撃すると書かれた脅迫メールだった。魚たちを守ろうと奔走する職員を嘲笑うかのように、次々と水槽が攻撃され、遂には職員の一人が謎の死を遂げる。警察に通報すれば、館内に居る客を無差別に攻撃すると脅迫された職員達は、自分達の手で秘密裏に解決を図ろうとする―
石持さんの作品は、刑事や名探偵が活躍するのではなく、一般人が推理を働かせて事件に当たると言う展開が多い。そこに創作の難しさがあり、良くも悪くも「好き嫌い」が出てしまうような気がします。ともすれば、「社会派ミステリ」に近い路線とも取られるような気もしますが、個人的には<日常の中にこそ多くのミステリが存在する>と思っているので、けっこう好きだったりします。
本作も、突付こうとすれば突付ける点が多々有りますが、そんな事はどーでもいい。ミステリとは、良質な謎に対して論理的な解決が成されており、かつエンターテーメントとして読んでいて楽しい、と言う要素が盛り込まれている事が大切だと思っているので、その点に関してOKならば、それで充分です。
特にこの作品は、舞台が水族館と言う特殊な空間で、展示される物が「魚」であると言う特徴から、館内は暗く、かつ印象的な照明が利用され、水のゆらめきと魚の動きが、なんとも独特の雰囲気を読み手に背負わせている所が上手いです。その背景をまとった上での謎は、清く、透明度のある終結に繋がって行きます。石持作品、また読んでみたいと思います。
さて、次は何読むかぁ・・・、『ホルモー』か『MANZAI』か、それとも・・・。