住宅を建てる前に地盤調査を行うようになったのは、まだ最近のこと。
たぶん20年前なら、地質調査は行っていなかったと思います。しかも布基礎が主流を占めており、ベタ基礎で造られる建物自体、少なかったかもしれません。その理由しては、木造の建物はRCやS造の建物に比べ軽いので、地震に対しては負荷が少ないと考えられていたからです。
つまり不同沈下に対する問題意識が、少なかったのでしょうね。
最近の施主は、ネットも含めて情報量が多いので、いろいろな事を良くご存知です。
材料なんかに関しては、下手をすると私より詳しい方も居るぐらいです。
ですから木造住宅でも、着工前に地質調査を行うことを、よく認識されています。
でも、万一、地盤が軟弱だったとき、どんな考え方で補強を行っているかを、知っている人は少ないのでは無いでしょうか。
一般的なベタ基礎を造る場合、基礎の底盤は地面からおよそ20cm程度の位置に。深くても50cm程の位置に造ります。これ、大前提。
話し変わって、地質調査を行い、軟弱な地層だった場合の補強方法は、大きく言って二つ。
一つは地盤全体を薬品で固めてしまう表層改良補強。でも、これは最近ほとんど遣らない。
もう一つは、杭状の物を地中に埋め込み、建物を支える補強方法。今はこっちが主流。
この杭状の物も更に二つに分類されます。一つは鋼管杭。つまり細い鉄のパイプを、沢山地中に埋め込むタイプ。もう一つは、直径40cm程のドリルで地中に穴を開け、その穴の中にセメントを入れて固め、太い杭を少ない本数設置するタイプ。前者を「鋼管杭」と呼び、後者を「ソイルセメントコラム」と呼びます。
どちらを選ぶかは、土地の広さや建物の形状・面積、道路の広さや予算が関係してきますが、肝心なことは、両者共に「支持杭」であると言うこと。つまり地中の硬い地層に到達するまで埋め込み、建物を支える杭だと言う意味です。
はい、そこで問題です。
それじゃあ、硬くて良質な地層が、ずーっと、ずーっと深くまで無かったときはどうするのか?
S造やRC造の場合には、フリクションと呼ばれる節の付いた杭を、地中に埋め込みます。
この節の部分が地中の土と接することで、建物の沈下や浮き上がりに対して抵抗すると言う物で、その特徴から「摩擦杭」と呼ばれます。
木造住宅の場合も考え方は同じで、摩擦による抵抗で、建物の安定を考えるのです。
着工したばかりの「大黒柱の家」は、この摩擦杭を採用しています。
これは鋼管杭とソイルセメントの両方を合わせた杭で、互いの長所を生かした摩擦杭なのです。
「タイガーパイル工法」と言い、関西地方に持っていけば、人気が出ることは間違いないようなネーミングの杭です。
明日の朝、この杭工事が始まりますので、見に行ってきます。
建設会社さんは既にお盆休みだと言うのに、無理を言って、休み前にこの工事を終わらせて欲しいと御願いしたのです。監督さん、ゴメンなさい。
と言うわけで、あすは朝から現場に行って来ます。
この杭工法は初めてなので、施工に関して十分注意ながら見て来ようと思っています。
天工舎一級建築事務所
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