建築の専門誌『日経アーキテクチャアー』の6月号の中で、東日本大震災の被害に関するQ&Aが掲載されている。中でも液状化の被害に関する話は、とても興味深く、同時に悩ましい問題でもある。
要点は、「築浅の木造住宅が液状化により傾いたとしたら、それは違反建築なのだろうか? また住宅会社は建築主に損害賠償をする必要が生じるのか?」という内容。
見解としては、違反建築として扱われる可能性は低いが、可能性がゼロな訳ではないとのこと。また設計者が液状化に対する検討や対策を、怠ったと見なされる可能性も低いとのこと。
専門的な解説は書かれているのだが、ここでは面倒なので割愛。
凄く簡単に超ぶっちゃけて書くと、設計者が木造住宅の計画時に、地盤の状態を確認するのは、一般的には「スゥエーデン式サウンディング調査(以下SSと記載)」と呼ばれる調査方法が多く、この調査方法では液状化に対する検討や解析が出来ないからだ。
SSとは土地の地質と硬さ、それに地下水の有無を調べる簡易調査で、木造住宅の基礎を考えるには、一般的にいえばそれで十分なのだ。勿論、建築基準法にも、それ以上の調査や安全確認の義務はない。なんせ2~30前には、こんなSS調査はおろか、どんな建物でもべた基礎で造られていた時代だってあるのだから。「だから良いでしょ?」と、言っている訳ではない。土地の強度を確認する方法と、液状化への検討は別の物だといっているのだ。
土地の液状化の有無を検討するためには、SSよりももっと高度な標準貫入試験を行い、土質の粘性度を試験で調べ、地盤沈下量を確認し、土質のめり込み度までをも調べなければならない。その上で液状化対策の必要性を判定し、必要ならば、その補強方法を検討・実施しなければならない。
たぶんこの調査費用は、かなりの額になるはず。少なくてもSSの5倍から10倍はくだらないと思う。勿論、その作業時間だって掛かる。さて、この費用と期間、施主は理解して負担してくれるのだろうか・・・。
まぁ、いろいろと考えてしまうが、これから住宅を計画をする際には、これら液状化に対する調査の必要性なども、キチンと説明しなければならないのだろう。その上で、対応を考えたいと思います。
天工舎一級建築事務所
E-mail toshio0223@k-tantei.com
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