最近はどこの家庭でも、車を持っている事が珍しくない時代になりました。それも「一家に一台」の時代から「一人一台」の時代と、世は正に自動車全盛時代です。ところが、この自動車「一人一台」の弊害を受けるのが「住宅」の新築時なのです。
御殿のような広い家を建てるならともかく、大抵の方々は30坪から50坪程度の土地に、家を建てる事になると思います。これは、土地と建物の購入費を合わせた金額と、返済可能な金額のバランスから考えると、この程度の土地の広さが限界だからです。もっとも、地方の坪単価20万円程度の土地ならば、話はまた別なのですが、今は一般的な街中の話と限定しましょう。
この土地に建物を建てる場合、当たり前ですが「建物」を、まず考えますよね?「リビングは広くて・・・寝室はこんな感じで・・・お風呂は」と言った具合にです。ところが建物を熱心に考えるあまり、外構まで気が回らないと言う事が、時として有るようです。外構とは庭やデッキ、駐車場と言った外部空間の事なのですが、この外部空間をおざなりにすると、やっぱり良い家にはなりません。
家を考える時、私は「バランスと気持ち良さ」を大切にします。建築家の大先生になれば、難しい理論や理屈をこね回し、私のような凡人には判らないコンセプトで造っていくようですが、私にはそんな芸当は出来ません。
ですから、もっとシンプルに「気持ちが良いか?悪いか?」だけを考えます。もう一つはバランスです。これも建物の中や外のバランス、窓から見える景色のバランス部屋の位地や大きさのバランス。全てバランス感覚なのです。
ですから、建物重視で外部空間の悪い家は、非常に使いにくいと思っています。玄関までのアプローチや、花壇の位置や造り方、駐車場の広さと言ったものが、後から無理やり積め込んだ物になってしまいがちです。なかなか気が回らないと思いますが、この当たりは大切な事です。
話のついでに、駐車場の話に少し触れますが、どうしてみんな同じようにコンクリートを敷き詰めただけの、味も素っ気も無い駐車場にしてしまうのでしょう?「もう少し考えろよ~!」と言いたくなる駐車場が多すぎます。
「たかが駐車場だから、何でも良いだろう~」と思われる方もいるでしょうけど、チョットだけでも考えてみましょうよ~。どこもかしこもコンクリートを敷き詰めただけの、味も素っ気も無い駐車場ばかり。倉庫の床じゃあるまいし、脳が無いったら有りゃしない。
駐車場と言うのは、車を止めるだけの場所では無いと思います。昼間、車が止まっていないような家では、子供がそこで遊んだりもします。昔なら、道の真中でキャッチ・ボールをしたり、缶蹴りをしましたが、今は残念ながらそんな時代では有りません。
かと言って、小さな子供達だけで遠くの公園まで行けるはずも無し、結果的に近くで小さな遊び場を探す事になります。それが、空いている駐車場なのです。
ご近所のお子さんを、良く見て下さい。狭い場所を上手に見つけて、遊び場にしているのを発見できますから。(残念ですが、そう言う時代なのですよ・・・今は)
その最後の砦みたいな場所の駐車場までもが、どこもかしこもコンクリート仕上げ。中には、棄て損なった古タイヤが詰まれたままだったり、オイルの沁みだらけの汚れた場所だったり・・・。
もし、そこで無邪気に遊ぶ子供が、自分の子供だとしたら切なくないですか?そんな場所で遊ぶ、我が子の姿を不憫と思いませんか?
駐車場をほんの少しだけ、貴方だけの家としてデザインしてみたらどうでしょう?もし、どうしてもコンクリートが安くて良いと言うのなら、それでも良いでしょう。
でしたら、海で貝でも拾って来て、コンクリートが乾く前に埋めてみたらどうですか?海が無かったら、台所に貼ったあまりのタイルを割って、家族で埋めてみるのも良いでしょう。ビー玉でも、ビールの蓋でも良いかもしれません。家族で、「我が家オリジナルの駐車場」を作ってみれば良いのです。犬を飼っている家ならば、犬の足跡を付けても面白いかもしれません。鶏の足跡なら、最高に笑えます。その凹みに色を塗っても良いでしょう。それとも、駐車場の真中に大きな穴でもあけますか?中に玉砂利でも敷き詰めて、そこでバーベキューでもやってみましょうか?
何から何まで、建設会社に任せてしまうのではなく、「自分の家」として楽しく作ることに考えてみませんか?表札を掲げても、そんなのは自分の家の証拠にはなりません。そんな物、他の表札に取り替えたら終いです。でも、家族で遊びながら駐車場に埋めた、タイルや貝殻の数々はどんなに表札を替えようとも、紛れも無く貴方たちの楽しい思い出や、時間を留めてくれる筈です。そして、そこで遊ぶ子供達は少しだけ良い顔で、笑っているかもしれません。
たかが駐車場です。たった15㎡程度の広さしかない場所です。だけど大切な家の一部である事に、違いは有りません。そんな隅々まで、愛した建物を造りたいですよね・・・。