Essay 86 私の仕事

「貴方の仕事はなんですか?」と聞かれれば、間違いなく「建築の設計を生業としています」と答えます。こうして夜遅くまでエッセイを書いているのだって、(今、23:40です)少しでも家を建てる人の参考になればと思い、飲みたいバーボンを我慢して・・・・実は、3杯目を飲んでます(^^;)

と、まぁ冗談はさておき、そんな私が先月まで「他人様」のホームページ作りのお手伝いと言う、なんとも無謀な作業をしていたのですから、さあ大変!(笑)しかも、ただのホームページではなく「ポータルサイト」なるものを作っていたから、驚きとしか言いようがありません。

自分のコンピューターの面倒さえ怪しいし、ましてや自分のサイト何ぞは、人様に見て頂くのも恥ずかしい有様なのにです。では、何でそんなことになったのかと言うのが今回の話し。

私、今だから言いますが、この「建築探偵舎」を作るのを最後に、設計事務所を辞めようかと考えていたんです。建築の世界もバブル以降は、スッカリ暇になり、私のように「飯を食う為に、住む人のことを考えねぇ仕事なんかやるもんか!」等と生意気なことを言いながら、住宅メーカーや建設会社の下請けのような図面書きの作業を嫌う、大馬鹿者が生きていくのには、あまりにも辛い時期だったからです。

まぁ、それでもこうして今でも生業を続けているのは、多分に「建築探偵舎」と、応援してくれる有難いブレーンのおかげなんですけどね。それだって、風前の灯火のようにはかないものですよ・・・。それでも「のほほ~ん」としているのは、多分にお気楽な性格の成せる技なんですけどね(自爆)

ところが冷静に周りを見廻すと、そんな状況は私だけじゃない様子。建設会社・不動産会社を始め、あらゆる業種の社長さんたちは、悪い景気の波に飲み込まれ今にも溺れる寸前の人ばかり。そんな人たちもご多分に漏れず、ホームページを利用して少しでも仕事に結び付けようと努力するも、1年間立ち上げているサイトのアクセスが500にも満たないような会社ばかり(>.<)見てもらえないんじゃ、仕事には結び付かないですよね(笑)

で、なぜか私に相談するんです「ねぇねぇ、一体どうしたら良いの?」って。(知ってりゃあ、私がとっくに実践してます)でも、無い知恵絞って考えたんです。で、出した結論が、「見てくれる人を探しに行くんじゃなくて、作ったら良いじゃん?」てね(笑)

誰もが集まってくるようなサイトがあって、そこで“お勧めのこの一軒”みたいにピックアップしてみたり、業種がまとまってイベント組んだり・・・面白いことって出来そうな気がして。個々のサイトが面白いか、あるいは興味の有る内容に成っているかの問題ですが、そこまでは今のところ面倒見切れない!(なんたって、自分のサイトだけで手一杯で・・・笑)

そんな考えをWebを本業にする知人に話しら「じゃあ、紙媒体を扱っているところと組むのが一番良い!」って事になって、地元で長年タウン誌を発行している会社に企画を持ち込んだところ「やりましょう!」と言うことに成った訳。

ところが、やり慣れないことは、するもんじゃないね~と思い知らされる羽目に・・・(>.<)長年、紙媒体で「情報を提供」し続けた会社だから、ネットの感覚と微妙にズレてる。

今まで「ネットなんか見た事も聞いたことも無い」と言う年配の人ならともかく、営業の第一線に立つ20代の人までもが、「ネットなんかに興味が無いから協力しない」と言い出す始末。(>.<)
ふぅ~、気の短い私が「アンタ、いつの時代の人?」と言わなかったのは、我ながら「自分の事を誉めてあげたい」(爆)

そんな環境でも、どうにかこうにか最初の形だけは作り上げたものの、肝心なのは飽きられない企画の立案と実践を続けていくこと。これ全て「遊び心と応用力そして実行力」の成せる技。手が離れ、一人歩きし始めたサイトの行く末は、我が子の後ろ姿を目で追う親のような心境。

もちろん会社が遣っていることだから利益は大事ですが、初心のコンセプトが、どこかに行ってしまわないかと心配です。あくまでも地域で追い込まれつつある企業や商店の、少しでも手助けがしたいと言う気持ちが無くならなければ良いと心配しています。

余談になりますが、「いくらなんでも、Webの世界に関係無いおまえが何やってんの?」と思う人がいるかもしれませんが、最初に言ったように、私、事務所を辞めようと悩んでいた時期があったんです。勿論、辞めたい訳では有りませんでした。ただ、辞めたほうが良いかなぁ・・・と追い込まれていたんです。

その時に考えたんです。私のような設計者と住宅メーカーなどの違いはなんだろう?ってね。散々悩んで出した答えは、「住宅メーカーは箱売り屋さんで、私は企画立案を生業とする提案作業が本分だ」とね。(住宅メーカーさんにも異論が有ろうとは思いますが、まぁ、大目に見てくださいな・・・笑)

もし私が提案作業を生業としているのなら、今までの仕事のやり方は中途半端だったかもしれない・・・と気がついたんです。

本来、設計者と言うのは依頼主から報酬を貰い、建物を作り終えたときに業務も完結するのが今までの考え方です。でも、本当は「私が設計したお店が流行っていないのならば、少しでも流行るように提案してあげることも仕事のうちじゃないの?」ってね。

住宅の場合なら長期の保全計画を考えるのに、お店の場合は建物の維持だけしてもしょうがないでしょ?だって、建物が存在し続けても、肝心のお店が閉店したんじゃ何にもならないですからね。つまり建物が箱だとするならば、一番大切なのは人だと言うことですよ。

まぁ、上手くは言えないですけど、そんな感覚が私の中で目覚めたことが、今回のWeb作業のきっかけになっていることは事実です。ちなみに今、私のとこにホームページ作成の依頼が3件来ています。「何で私に?」と尋ねたところ、「ホームページを作るだけだったら誰でも出来るけど、大切なのは、しっかりしたコンセプト・ワークと信頼関係の築ける人が良いから」と、すご~く誉められちゃいました。(出来れば、建物の設計依頼のほうが嬉しいんですけどねぇ~・・・失礼)

これから私の事を「歌って、踊れて、設計も出来て、少しだけなら文章も書いて、ホームページだって作っちゃう探偵長と呼んでくれ!」と、言ったら絶対に殴られそうですから言いません(爆)