Essay 125 仕切る奴

何処の世界にも「仕切りたがる人」と言う方は居るもので、飲みに行った時でさえ

「ハイハイ、あんたはここに座って!アンタはあっち!君は注文取って店の人呼んで!」

なんて具合で、まったく見ているこっちが疲れてしまいます。大抵そう言う御仁に限って動かない。
つまり口だけ動かすって訳。


こんな「仕切り」は嫌なもんですが、建物の中の仕切りは非常に重要だったりします。部屋と部屋を区切る為の仕切りなのですが、その仕切りには実に様々な方法が考えられたりします。


直ぐに思い付くのは「壁」と「扉」ですが、この他にも床の段差や明かりによる仕切りも考えられるでしょう。壁だって普通は動かない物ですが、壁全体を動かせるようにすると、狭い部屋から広い部屋に、あるいは小さく区切る事だって可能に成ります。これ、扉と微妙に似ていますが「似て非なるもの」。


例えば扉と言われて思い描く大きさは「横80cm程度で、高さが2m」と言うところでしょうか?それじゃあ「横2mの、高さは天井まで」と言ったら、ほとんどの人の常識的な「扉」の大きさとは違うものになるでしょ?つまり壁なんですよ。(設計をしている方には“建具”ですけどね)


つまり普通は固定されている物が動いたりするだけで、もう全然違う空間を考える事もできると言う事ですよね。ただし、こんな考え方は、なかなか採用されないのが現実かもしれません。施主の頭が固いのか、はたまた設計者の説得力の無さなのか?


それから仕切りを動かす時に、普通は横方向に動かします、扉もカーテンだってそうですよね?唯一違うと思い付くのがロールブラインドとシャッター。これらは上下方向に動かす仕切りですが、もっと考え方を発展させて障子や扉も上下に動かす事も出来るかもしれません。そんな事を考えるのは設計者の役目ですが、頭を柔軟にしなければいけないのは施主の方も同様です。

一度90度直角に曲がる障子を作った事がありますが、途中で位置で停めておくと、まるで衝立のようで、とても面白かった事が有ります。


小さな家を考える時に狭い部屋を並べる事は避けたいと考えていますが、どうしてもそうなってしまう時など、思い切って全ての壁が可動式だったりすると、後々の家の拡張性は高いかもしれませんね。


仕切ると言う事は、とても大切な事ですが、物事を正面から見ている、あるいは常識だけに捕らわれた固い頭のままでは、狭い場所を広く使う事も出来ないし、広く感じさせる事も出来ません。同様に少ない予算でも、何処となく優雅で魅力ある家にはならないのです。


人の価値観や考え方をコピーしているだけではダメ!・・・と言う事です。見た物を少しでも発展させたオリジナルの発想を持たなければ、つまらないと思いませんか?折角のご自分の家、今こそ「貴方が仕切る番」なのですからね。