先日、知人の知人(つまり全然知らない人)から、「工事中の自宅現場をチェックして貰いたい」と言う相談を受けた。なんでも、親戚に水道屋さんが居て、その水道屋さんが、世話になっている大工さんに家を建てて貰っている最中とのこと。木造の2階建ての住宅で、広さはおよそ35坪。現場は上棟(建前)から1ヶ月以上が経っており、サッシや玄関扉も、既に取り付けられているらしい。
「で、そんな状況で、何か心配な事でもあるのですか?」と、尋ねたところ、どうも返事に要領を得ない。
「何か心配事があるのなら、部外者の私ではなくて、設計者に尋ねてみては如何ですか?」
ところが設計者とは面識が無く、書類に書かれていた連絡先に電話をしたのだが、「うちは代願手続きをしただけなので、工事のことは大工さんに聞いてくれ」と、言われてしまったらしい。「だったら大工さんに聞けば?」と思うのだが、この大工さんのことも、あまり信用していないとのこと・・・・・。
「だったら、なんでそんな人に頼んだの?」と、喉まで出掛かったが、さすがにそこは グッ と飲み込んだが、さて、そんな状況で一体私にどうしろと・・・・・?
でもね、大工さんが仕事している現場に、見ず知らずの私が行って、「建物の出来をチェックさせて下さい」なんて言ったら、大工さんだって良い気がしないでしょ? それに、あとあと気まずくなるでしょう? それは困るでしょう? と言うと、なんと!現場の鍵を貰っているから、日曜日にコッソリ見に行って欲しいと言うじゃありませんか!!! もう、訳分からん・・・・・・・・・・・・・・なんで現場の鍵持ってるの???
「その鍵は、どうしたのですか?」
大工さんが、玄関扉を取り付けた際に、「いつでも現場に入って、見て下さい」と、渡してくれたらしい。・・・あほだ(ボソッ)
ここで関係者全員の間違い探し。
■設計者の場合
この建物は35坪。つまり115㎡ほどの大きさです。
代願事務所であろうと、なんであろうと、100㎡以上の建物には、監理者責任が発生します。つまり『現場を見る費用までは貰ってないから、大工さんに聞いて頂戴!』なんてセリフは通用しないのです。建物が設計図どおりに、あるいは基準法に違反することなく、適切に完成させるために、監理する義務があるのです。 と言うことで、「わしゃ知らん!」なんて発言していることが間違い。
■大工さんの場合
現場に玄関などが設置され、戸締りが出来るようになった状況で、なんで施主に鍵を渡しているの?
大工さんが来ていない休日に、施主がその鍵で現場内に入り、怪我をしたら、それは立派な労災です。労働基準監督署が「現場の安全管理が適切でない」と判断したら、現場作業は全面ストップです。怪我の原因の調査をしたり、責任者あるいは施工会社に行政処分が下されたりもします。つまり会社が無くなったりする訳です。一人親方の大工さんだから、そんなことは「い~わ い~わ」で、済むと思ったら大間違いなのです。つまり施主を含む第三者の安全を、確保していないと言うことが間違いの一つ。
もう一つは、建物の質を確保していないと言うこと。誰も居ない現場に施主が入り、貼ったばかりのフローリングの床の上に、硬い物を落として凹ませてしまったとしましょう。これ大工さんの責任で、張り替えるのですか?あるいは施主が、休日前に塗装して、養生している(つまり乾かしている状態)時に室内に入り、塗ったばかりの箇所を、うっかり洋服で擦ってしまったような場合はどうします?ペンキ屋さんに、もう一度来て貰い、塗り直してもらうのですか?その費用は誰が払うの?汚してしまった施主? それとも考えも無しに、施主に鍵を渡してしまった大工さん? それとも何の関係も無いペンキ屋さんの泣き?(持ち出し)
建物の質を管理することは、施主にも、施工者全員にとっても大切なことなのです。これが2つめの間違い。
この他にも、火事に対する心配などもあります。
たとえ自分の家を作って貰っているのだとしても、工事中の建物の所有権は施工者(施工会社)に、あります。だから完成した時に「引渡し」と言う手続きがあるのです。
どんな理由があっても、現場の管理者が居ない状況で、施主が一人で入り込むような真似をしてはいけないのです。それは施主自身のためでもあり、施工者全員&建物の為なのです。
■施主の場合
なんで、そんな人たちに家を造って貰ってるの? 第三者の私の所に来て、「大工さんが休みの日に、現場のチェックしてくれ」って、どういう意味???そんなに信用できない相手だったら、止めたら?一度は信用して任せた間柄でしょう?最後まで信用するか、不安があったら、そのことをチャンと相手に伝えたら良いのに。
恋愛と一緒で、勘繰るだけではダメなのです。
良い関係で居たいと思ったら、チャンと話し合わないと、理解しあうことは難しいのです。
・・・・・・・・と言ってる私は、恋愛下手です(そんなカミングアウトは要らん)
ちなみに、この知人の知人の方には、2時間以上に渡り説明し、お引取りいただきました。
その後、何の音沙汰も無いので、どうなったかは分かりませんが・・・・・・。