現代社会は「ストレス社会」と言われ、働き盛りの大人から学校に通う子供までもが、多くのストレスを抱えて生きています。その中身は仕事のこと、学校のこと、恋愛や結婚のことと様々。そんなストレス社会に生きる私たちは、いろいろな方法でストレスを和らげようと考えます。例えばお酒やカラオケ、ゴルフや買い物と言った具合に、性別や年齢によってもその方法は様々です。
ではこのストレスとは、一体なんでしょう?あまりにも日常的に使いすぎている言葉なので、かえってその本質部分を忘れてしまいがちですが、ここを正しく理解しておかないと、正しい緩和方法も分からなければ、入浴する事との繋がりも、あやふやになってしまいます。
ストレスとは、簡単に言えば自律神経の交感神経が優位になる状態を言います。もっと分かりやすく言えば、緊張から筋肉が収縮するような状態だと言っても良いでしょう。
と言う事はストレスを和らげる方法は、その逆の状態にすれば良いと言う事になります。具体的に言えば副交感神経を優位にし、筋肉を弛緩させると言う事です。筋肉が収縮するような状態を癒すには、温めて、ゆっくりと伸ばしてやれば良いのです。つまり入浴とは「筋肉を弛緩させる効果」「温かいお湯に浸かる心地良さ」「裸になる開放感」「心穏やかな時間を過ごす」と言う四つの意味で、ストレスを和らげる効果的な方法だと言えるのです。これほど手軽なストレス緩和方法が、日常の中で得られるのならば、浴室を快適にしておくことは、とても重要な意味を持つことになるのです。
つまり五感を使って浴室を楽しむと言う事は、「家」と言う癒しの場所において、その一番の役を担う場所を、有効に活用すると言う事になります。
入浴がストレス緩和に対して大切であり、そのために浴室の環境を整えると言う事が大切だと言う事を理解していただいた上で、具体的な話しを進めたいと思います。
◇五感その1-視覚
五感と言うキーワードで浴室を考える時、最初に思いつくのは「視覚」です。浴室で工夫できることも、視覚による物が一番多いと思います。そこでまず初めに「視覚」に関する話を、簡潔にかつ要点を絞ってご説明したいと思います。
視覚的効果を考えるのですから、「広く見せる」と言う方法が、最初に思い浮かびます。そして「広く見せる」のは、当然ながら浴室の面積です。広々とした風呂でゆったりと手足を伸ばし、のんびりと湯に浸かる。まさに至福のひと時。このとき浴室内全体を広くする事が出来れば良いのですが、現実的には予算や他の部屋とのバランスもありますので、浴室だけを広くすると言う訳には行きません。そこで考えるのが「洗い場を広くするのか、それとも浴槽を広くするのか?」と言う選択だと思いますが、ここは迷わず大きな浴槽を設置することをお薦めします。浴槽の大きさは、膝を伸ばせる程度の浴槽が理想的です。
最近は浴槽内に段が付いているタイプの物もあり、小さな子供が居るご家庭では、とても便利だと聞きます。この段付きの浴槽は半身浴にも適しており、腰掛けて膝を伸ばせると言う利点があるので、リラックスすることが出来ます。
余談ですが浴槽の深さは、およそ50~60cmと言うのが一般的です。この深さ50~60cm程度の浴槽に肩まで浸かると、水圧でお腹の辺りでは3~5cm、胸の辺りでも1~2cm程度は縮むそうです。心臓や呼吸器系に疾患をお持ちの方は、負担が多いので注意が必要です。浴槽は幅の大きな物ほど浅く、小さな物ほど深く作られていますので、こう言った視点から考えても、大きな浴槽を設置すると言う事は大切な事だと言えそうです。一般的には、1坪~1.5坪程度の広さの浴室が多いようです。
●面積に次いで浴室を広く見せる方法といえば、「天井の高さ」を確保することでしょう。在来工法(ここでは現場で造る浴室の意味で用いています)の浴室でなくても、ユニットバス(以下UBと表記)でも、今はドーム型をした天井の高い製品が多数あります。これらを利用するだけで、簡単に天井の高さを高くする事が可能です。
天井を高くすると言う事は、浴室空間の容積が増えると言う事なので、視覚的に開放性を増す方法の一つとなるでしょう。
また広く見せると言うのは、浴室内の広さだけに限ったことではありません。例えば浴室の窓から見える外の景色によっても、浴室の開放性を感じることが出来ます。イメージとしては露天風呂の開放性を思い浮かべていただければ、お分かりいただけると思います。
その開放性を得るためには、浴室の配置計画に一工夫が必要です。例えば左の写真のようなUBを設置する場合でも、配置の仕方によっては外部への広がりを感じることが出来、浴室の広さ以上のゆとりを感じることが可能となります。浴室の窓の外に小さな庭を設けたり、木を植えたりするのも一つの方法でしょう。また隣の家に向かい合うような配置になってしまった場合には、浴室の窓の外だけ木製の格子などで演出を加えるのも良いかもしれません。ほんの少しの外部空間が、浴室という限られた空間に与える印象は、とても大きな意味を持ってくるのです。
下の図のように浴室の前に小さな外部空間を確保すれば、入浴する際に浴室の窓を開け、月夜を眺めながら風呂に入ることも可能です。これも浴室を心地良くする為の一つの方法だと思います。
そうなると窓の大きさは、とても重要な意味を持つことになります。窓を出来る限り大きくして、景色を取り入れたいと思うのは人情ですが、外部からの視線の干渉を受けない場所でない限り、そのような窓の設置は難しいと思います。従って自分の土地の中で工夫をすることになるのです。
その為には窓を取り付ける高さや幅、隣家や近隣からの視線の干渉を考慮して、開放性を得るように検討することが必要です。外部からの干渉を受けない天窓を設けて、星や月を眺めながら入る浴室も楽しいかもしれません。
「視覚」を利用した楽しみ方について、まだ半分程度しか語れていないのですが、思った以上に長くなってしまいました。あまり長くても飽きてしまうので、まずはここで一区切りします。
後半は近日UP致します。