『恐怖は同じ』カーター・ディクスン著 読了

1795年、グレナボン伯爵は、オウルダム令夫人の姪ジェニファと出会う。初めて会った筈なのに、なぜか知り合いのような気がする二人。それもその筈、二人は150年後の1950年の現代において恋人同士だったのだ。1950年におけるグレナボン伯爵ことフィリップは、何かの罪で追われる身。逃げ惑う二人だったが、ジェニファが思わず「150年の昔に戻って、こんな苦しみから逃れられたら」と、叫んでしまう。そして気が付くと二人は、本当に150年前の1795年に生きる二人となっていた。だが二人を襲う恐怖は、その時代にもしっかりと待ち受けていた—— 1961年に、カーター・ディクスン名義で書かれたミステリ。

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カーの描く時代小説は、好き嫌いがハッキリしていると思います。なぜなら作品のパターンが似ているから。ヒーローはあくまでもヒーローで、ヒロインは何処まで行っても、一途なヒロインだから。それは本作でも同じですが、私は嫌いじゃないので楽しめました。銃を使った決闘シーンでも、ヒーローは銃に弾なんて込めないし、ボクシングのチャンピオンと戦ったって、相手をコテンパンにしてしまう。しかも地位は伯爵。こんなに隙がないのに、なんで窮地にばかり追い込まれてしまうのか不思議でならない主人公。まっ、それがカーの時代小説なのですが、本作に限って言えば肝心の事件の謎解き部分に関しては、若干のモヤモヤ感が残ります。

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リフォーム工事のクライアントが、工事に先立って家の中を片付ける際に、大量に処分しようとしていた本の中から頂戴した一冊。カーの作品で、主人公がタイムトラベルする時代小説と言えば、有名なのは、『ビロードの悪魔』という作品。しかも悪魔が出てきたりする、一風変わったミステリです。探して読んでみよう。

コメント

  1. カチカチ より:

    ハヤカワ・ミステリーの装丁は素敵でしたよね。昭和36年の本が、どこかで大切に読まれているのを知ると、心が温まります。

  2. 安井俊夫 より:

    コメントありがとうございます。
    子供の頃、ボケミスは高価な品で、簡単に買うことの出来ない本でした。紙の箱に入っていたり
    ビニールのカバーが付いていたり、小口に黄色い色が付いているのを眺めて、憧れたものです。
    だから今でもボケミスには、少しだけ憧れに似た気持ちを抱いているのかもしれません。