自分の土地だからと言って、どんな建物でも好き勝手に建てられるわけではない。都市計画法によって建てられる建物用途や面積、構造や規模などが明確に決められており、秩序ある都市を造ろうと考えられている。それが「用途地域」。
用途地域は大きく分けると、住居系・商業系・工業系の三つに分けられ、それぞれがさらに細分化されている。もっとも制約が多いのが住居系の中の「第一種低層住居専用地域」と呼ばれる地域で、この地域は「低層住宅の良好な環境を守るための地域」と、定義付けられている。
簡単に言えば、小さな住宅だけが建つ閑静な住宅街を造ろうというエリア。だから商業施設や工場を建てることは出来ない。個人が経営する店だって、住まいと一緒になった小さな建物しか建てることが出来ない。ところがこの第一種低層住居地域(以下、一低層と表記)に、条件付きでコンビニを建てても良いことにしますと、発表されたから驚いたと言う話。
理由は高齢化する社会状況を考慮し、買い物に不自由する「買物難民」を救済するために、用途地域内の規制を見直すと言う話らしい。買物難民とは、高齢者だけでなく、単身者や共働き夫婦も含まれているという。なんとなく納得する点もあるが、果たしてコンビニを作ることで、問題が解決されるのかという疑問も残る。
コンビニは確かに便利だし、いろいろなメリットが多い。だけど同時に、けして少なくは無いデメリットも持っている。例えば騒音問題や24時間営業されるなら、その照明の問題もある。ゴミの散乱や買物客の迷惑駐車、あるいは商品を搬入するための大型車両が通行するという問題だって生じるかもしれない。
最近は学校や幼稚園さえも迷惑施設と呼ばれてしまう時代なのに、閑静な住宅地のど真ん中にコンビニが建つとなれば、近隣との対立が生じることは容易に想像される。プラスとなる点はたくさんあるが、新たに生まれるマイナス点が気になってしまうのは仕事柄だろうか。
建築基準法が緩和される側に変わっていくのは良いことだが、その改正によって生じるであろうトラブルや問題が、少しでも少なく、あるいは小さくなるような配慮を持った内容となることを願うばかりである。