牧師の娘モニカが初めて書いた小説が大ヒット。その評判を聞きつけた映画のプロデューサーから、脚本家として招かれることになった。だがロンドン近郊の映画撮影所に着いた当日から、なぜか命を狙われる羽目になる。見かねたもう一人の脚本家カートライトは、H・M卿に助力を乞うのだが―。
ミステリと言えば、たいていの場合、殺人事件が起きてから探偵が動きだして謎解きをするもの。だが本書の場合は少し違う。何度も命を狙われ危険な目に合うのだが、「なぜ命を狙われることになったのか?」、そこに焦点を当てている。同時に、大きな謎がもう一つ提示されているのだが、その答えも「そんなところにあったのか!」と、いう感じで示されている点が面白い。
カーター名義の作品の中では、あまり評判が宜しくない本書だが、私は結構好きな作品。カー独特の暗くジメジメした作品ではなく、もう一方の特徴でもある、明るいドタバタ劇を繰り返す感じは、翻訳の妙も相まって凄く楽しめる作品に仕上がっている。映像で観たら、もっと楽しめるかもしれない。