棚林高校に通う姉・涼子は、可愛くて面倒見の良い、誰からも好かれる三年生。だがある日、バイクに撥ねられて死んでしまう。撥ねられた場所は、家からずっと離れた場所。撥ねたバイクを運転していたのは、なぜか姉と同じクラスの男子。警察は単純な事故と判断し、未成年だった犯人は鑑別所に送られて事件は幕を引いた。だが何かが変だと考えた妹の結花は、姉と同じ棚林高校へ入学し、一人姉の死の真相を探るべく調べ始めるのだが。R18ミステリ。
痛い、怖い、臭い、醜い、悔しい、そんな嫌な感情ばかりが先に立ち、思わず途中で読むのを止めようかと思ったほど。だが最後まで読んだ。最後は哀しい、ただ哀しい。どこまでも哀しい顛末。最終章の「赦す光」は約20頁程だったのだが、うっかり電車の中で読んでしまい、不覚にも泣きそうになってしまった。
いい歳したオッサンが朝の満員電車で、ミステリを読んで涙するなんて様は、醜悪以外の何物でもないからね、つまりそんな最終章。男は幾つになっても醜悪で無様、そして女は気高く優しく美しい。そんな男の想い描く理想の女性を描いた小説でした。
誉田さんの作品は、「ジウ」シリーズの主人公・伊崎基子や「ストロベリー・ナイト」の主人公・姫川玲子、それから『ヒトリシズカ』の伊東静香も同じですですが、強く、気高く、美しい女性として描かれています。それは強さの裏にある弱さを上手に描いていることと、守る物があるから光る強さだと思います。
本書の涼子の強さと気高さも、彼女の守るべき物が確りと描かれているからこそ納得する帰結であり、「赦し」へと繋がっていると思います。帯の「知ることは、ときに罪である。」に納得した読後です。