神奈川県内で、実在する二級建築士の氏名と事務所名を騙り、神奈川県・東京都に跨って、計55軒の住宅設計を行っていた者の氏名が公表されました。
実在する建築士をかたって設計等を行った者の氏名の公表について
この事件が発覚したのは、民間の検査機関が不自然な事態に気付き、神奈川県に報告したことが切っ掛け。県は既に完成している家の建蔽率や耐震性を調査し、調査を終えた三軒に関しては、基準法上問題が無いと発表しています。
相変わらずツッコミどころ満載の記事ですが、実際にこの手のインチキ建築士や認可取得業務は、他にもあるような気がします。詳細が分からないので、あくまでも推測ですが、無資格者でも経験さえあれば、確認申請を取るぐらいの図面を描くことは出来るし、その手続き行為だって行えます。その場合、インチキが発覚し易いのは、建築士の個人名からではなく、建築士事務所の方です。
少し前までは、確認申請書に建築士免許の写しを添付することが義務付けられていましたが、それも平成25年に法律が改正され、今は添付が不要になりました。つまり個人名が理由で身元がバレる危険は減ったのです。身元がばれるとすれば、それは確認申請や現場検査の際でしょう。
確認申請手続きの際は、書類の訂正や修正は事務所に連絡が入るし、中間・完了検査の手続きだって、基本は事務所へと連絡が入るもの。まして今は、年間に行った設計業務一式を県に報告する義務もあります。事務所が行っていない設計監理業務は当然報告しないので、実際に建った建物との実態に矛盾が生じます。だからどんなに上手に隠していても、絶対に事務所にはバレるのです。それでも同様の事件は後を絶たない。全く浅はかとしか言いようがないです。
またそれとは別に、県は既に完成している住宅を調べ、「基準法的には問題が無い」と、発表していますが、今後どうするつもりなのでしょう? 問題が無ければ良いのだとすれば、今後、この手の不正が無くなることは絶対にないでしょう。だって無資格者が設計した建物でも、検査機関が認可し、その後に県がセカンドチェックするような形で「問題ない」と発表したのですから、完全に問題が無いと、お墨付きを貰ったようなもの。無資格者が行った設計でも、安全性に問題が無いから良しとなれば、果たして家の価値とは一体なんなのでしょうか悩んでしまいます。
さてこの話、落としどころは何処なのでしょうか。