建築士資格を持たないニセ建築士が、約5年間の間に55軒あまりの住宅の設計を行い、1500万円を超える報酬を受け取っていたという事件が発覚した。ニセ建築士の氏名は(本人から連絡があり削除しました)で、彼が確認を取った55棟の建物の内、16棟で補強金具等の設置不足が見付かっているとのこと。また建物は横浜市と茅ヶ崎市に多く建てられています。
この類の話をたまに目にするが、こんなもんに引っ掛かるシステムと業務の流れ、それに依頼者の認識不足に問題があると思う。その先に、確認申請を認可する検査機関や行政庁でのチェックになると思うのだが、そもそもは素人に建築士資格の名義貸しや建築士事務所の開設手続きが取れてしまうことが、まず最初の問題。
それから依頼者の認識不足と書くと、「施主は素人だから、ニセ建築士を見抜けない」と叱られそうだが、言いたいのはそこじゃない。このニセ建築は、約5年間で55棟の確認申請を行い、その報酬として1500万円程の利益を得ている。つまり一年で約11棟の設計を行い、一軒ごとの報酬額は約27万円となる。これって設計業務じゃなくて、認可を取るだけの代願業務報酬だと考えられる。
代願業務とは何かを今更説明しないが、代願業務の依頼元は不動産会社やローカル・ビルダーが主で、それぞれの依頼先は一軒ごとに契約などを行わず、当然、資格の有無なども確認することが無い。で、その先に住み手となる購入者が居るわけだ。この辺りの住み手が、設計者への信頼では無く、不動産会社やビルダーへの信頼で依頼しているために、肝心要の設計者を知らずに家の設計を任せてしまうことになる。これが問題だと思うわけ。まっ、いろんな形での家の建て方があるので、どれが良い、どれが悪いは無いのだが、少なくても自分が建てる家に対して、いろんな意味で興味を持ち、知ろうとする関心を抱くことは必要だよね。
で、話が遠回りしたが、ニセ建築士は本当に止めて欲しい! こいつらのせいで、確認申請の手続きが今以上に煩雑になったり、しなくても良い講習会に呼び出されたり、報告書の提出を義務付けられたりするのは真っ平御免! 何時の時代も迷惑を被るのは、真面目やっている善良な奴ばかり。ニセ建築士騒動に怒っているのは、家の購入者だけでなく、真面目にコツコツと仕事をする普通の建築士さんだって怒っているのだ! と、いうこと。
これからビルダーや不動産会社で家を建てようとする方は、試しに聞いてみたら? 「建築士さんの免許、見せてもらえますか?」って。 私たちがクライアントと契約する際には、当然、重要事項説明をした後で、免許書を提示し契約してます。これ、義務付けられた流れなのですよ、ホントは。