賃貸アパート大手のレオパレスの違反建築問題が、いまだ沈静化しないばかりか、実態調査さえ全てを終えていないと報道された。6月末の時点で25992棟のアパートを調査し、その内の19689棟の建物に不備が見つかっている。その違反率はナント75.75%に上るというから驚きなのだが、過去に施工された建物の実数は39000棟を超えるということなので、まだ13000棟ほどの建物が調査さえされていないことになる。国交省からは6月末までに全棟検査と見つかった違反建物の是正工事を追えるように指導されていたが、そのどちらも完了させることが出来ていない。レオパレス側は10月末での期間延長を求めたようだが、はたしてその期間延長で残り13000棟の検査を終え、違反内容の全てを是正できるのかは疑問が残る。
この問題はアパートの入居者にも負担が大きいが、それ以上に大家さんへの精神的・金銭的なダメージが大きい。今後、違反内容を是正し終えたとしても、一度信頼を失ったレオパレスに、果たしてどれだけの入居者が集まるだろうかという不安は、大家さんの収支計画にも影響してくるからだ。
もう一つ心配なのは、これだけ大掛かりな違反建築が全国各地でまかり通っていたと考えると、建築基準法の完了検査の仕方に果たして問題は無いのか?と、言うことだ。建築行政は、ある意味、性善説に立っていると言える。法的資格所有者が、その資格と責任の名のもとに、万が一にも違反はしていないだろう――という視点で検査をしている。その点を悪意を持って利用した場合、どんなインチキでも出来そうな気がする。
だとすると性善説から性悪説に変えた方が良いのではないか?と、言う考えるのは至って普通の思考だろう。かっての姉歯元建築士の耐震偽装事件以降、大きく性悪説に舵を切った法改正が行われてきた。そのせいで真面目に仕事をしている人たちへの負担が、どれほど増えたことか。それでもこうした大掛かりな違反が見つかると、きっと検査の方法などが変わってくると予想される。それが安心に繋がり、良質な建築行為あるいは建築行政へと繋がって行けば救われるが、どんなことにも抜け道というものを見付けてくる輩は必ず居る。そして違う抜け道を探すことになる。
この件に関してだけ言えば、大家さんにも住み手にも、そしてその建物工事に携わった善良な職人にも、何処かに救いがあることを願いたい。