パリ市内の目抜き通りで爆破事件が起きた。犯人は爆発直後に警察に出頭し、爆弾は全部で七発を仕掛け、残りの六発は毎日一つずつ爆発するようにセットしたと告白する。だがそれ以上の詳細は、カミーユ・ヴェールヴェン警部としか話さないと口を閉ざしてしまう。指名されたヴェールヴェン警部は犯人を尋問するが、犯人の要求は服役中の母親の釈放と、自分たち二人のオーストラリアへの亡命。それが適わない場合には、爆弾を仕掛けた場所は話さないと言う。その間にも二発目の爆弾が爆発する時刻が迫ってくる――。
主人公カミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズは、1『悲しみのイレーヌ』2『その女アレックス』3『傷だらけのカミーユ』の三部作がすでに刊行されており、本書はその四作目になります。ただし日本では二番目に書かれた作品2『その女アレックス』が最初に発刊され、書かれた順番と出版される順番が違っています。もし著者のイメージ通りに読むなら、初めに1『悲しみのイレーヌ』、次に2『その女アレックス』と読み、三番目に本作4『わが母なるロージー』を読み、最後に3『傷だらけのカミーユ』を読みましょう。
理由は本作を、3『傷だらけのカミーユ』よりも先に読んだ方が、ヴェルーヴェンが恋人のアンヌをいかに大切に思い、アンヌもまたヴェールヴェンを愛しく思っているかを理解できるから。そしてその気持ちを知ることで、3『傷だらけのカミーユ』をより面白く読むことが出来ます。この作品は中編でボリュームもそれほど多く無いことと、展開が早いのでスラスラ読めます。それでも著者が持つ独特の暗さとか哀しみと言った世界観は、本作でも十分に感じることが出来ます。そしてそんな著者の持つ独特の世界観が、かなり好きです。
ちなみに著者の『天国でまた会おう上・下』巻は、本棚に積まれたままなのですが、いまだ触手が伸びず。