レナウン崩壊とアフターコロナ

アバレルの老舗レナウンが民事再生しましたね。とても残念です。レナウンと聞いて思い出すのはイエイエ・ガールですが、私の場合は「ダーバン」でした。昔、アラン・ドロンがCMをされていましたが、若い時にヨーロピアン・デザインの服が好きで、DOMONやROPEを扱っていた店に通っていた時代がありました。その店ではDURBANのスーツも扱っていて、見るたびに「いつかあんなスーツの似う大人になりたい」と、憧れていたことを覚えています。

そのレナウンが業績を下げ、中国資本のアパレルメーカーの子会社になったのが2010年。その後も思うように業績が回復せず、今回のコロナ禍騒動の影響でトドメを刺されたように書かれていました。でも記事には親会社への売掛金53億円の回収が出来ず、突然民事再生へと舵を切ったとも書かれていて、社員も寝耳に水の状態だったそうで、なんだか不憫です。

企業の栄枯盛衰は経済活動なので仕方ないことなのかもしれませんが、凄く青臭いことを言えば、昔は社員に「愛社精神」があり、会社には「社員は家族」と言う気持ちがありました。「暖簾を守る」的な気持ちもあったでしょうし、会社に対する愛情みたいな物が社員の根底にあり、家族ぐるみで会社を守り盛り上げていくと言った、何処かの作家が書きそうな物語が、そこかしこで見られた時代が確かにありました。

ですが時代は変わり、たった一人の社員と99人のパートで動かす会社なんて奇怪な組織が跋扈する時代になり、まして老舗メーカーを外国資本が吸い上げ、あるいは切り捨てる時代に移り変わってしまいました。まぁそんなことは、とっくの昔に始まっていたことだ言えば確かにそうなのですが、なんだか寂しい気持ちは拭えません。

まだ首都圏では緊急事態宣言が解消されていませんが、今回のコロナ禍騒動で一つ学んだことがあるとすれば、それは私たちの身の回りにある多くの物が、外国で作られいると言うことでした。マスク一つとっても、手に入らなくなってしまう怖さ、国内の老舗メーカーの建築部品さえも手に入らないと言う事実。なんだこりゃ? 熟練した町工事の職人さんが消えてなくなるわけです。

偉い学者さんや建築家さんは「アフターコロナ」と名付けて、すでにコロナ禍騒動がひと段落した後の世界を語り始めていますが、そこにこの国の中で生きている職人や技術者の存在を捉えておいてほしいものです。

また忘れてはいけないのが「食」に関することですが、特に農家さんに対しては気にして欲しいです。メディアの偉い人は直ぐに「我が国の食料自給率は低い」と言いますが、大切な農家を守るための「種苗法」の改正案だって、まともに通らないのがこの国の実情です。農家が創意工夫して産み出す様々な新種の食べ物を、外国人が盗むようにして国外に持ち出し、「これは我が国が産み出した新種の果物だ」などと言い張る始末。そんなことでは農家・生産者を守る事は出来ないし、食糧自給率を高めることなど不可能というものです。

どこぞの女優さんが「種苗法改正反対」と呟いた程度のことで、法律が通らなくなるなどとは思えませんが、それでも33万人のフォロワーを持つ人となれば、立派なインフルエンサーなので、いろんな意味での影響力はあるのでしょう。この国の農家と食を守る法律に反対する理由は理解できませんが、生きる糧として働く生産者の声は届かず、被害の及ばない遠くから石を投げる、あるいは他者に石を投げさせるような行為が勝ってしまう世の中は、なんだか好きじゃありません。

コロナ禍が落ち着いた時代をアフターコロナと呼ぶのだとすれば、その頃には今よりも少しだけ国内の技術者や生産者の人たちにとって、希望が持てる瞬間になっていてくれることを願っています。