『濱地健三郎の幽たる事件簿』有栖川有栖著/読了

人には視えないものが視える心霊探偵・濱地健三郎と、その助手・志摩ユリエが怪異な現象と相対する連作短編集の第二段。本作には『ホームにたたずむ』『姉は何処』『饒舌な依頼人』『浴槽の花婿』『お家がだんだん遠くなる』『ミステリー研究会の幽霊』『それは叫ぶ』の全7話が収録されています。

推理小説なのか怪談もののホラー小説なのかと聞かれたら、そのどちらでもありどちらでもないと言われるのでしょうか。著者自身は「あとがき」の中で「両者の境界線」というフレーズを使われていますが、そもそもミステリって、上質な謎の提示と論理的な解があれば成立するものだと解釈しているので、本シリーズもミステリとして楽しんで拝読しています。

どの作品も興味深く面白かったのですが、怖かったのは『お家がどんどん遠くなる』でした。ただどの作品も不可思議な霊や妖の類の話しなのに、どこか人間らしいというか、そんな雰囲気が感じられます。たぶん探偵・濱地氏が纏う雰囲気なのかもしれませんね。怖いと言うよりも、哀しい話が多い様な気がします。

蒸し暑く寝苦しい夏の世に、是非。

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