冷蔵庫の設定温度にまで政府が口出しする国

「この夏電気が足りなくなるから、冷蔵庫の設定温度を上げて節電するように」と、梶山経産大臣が話していたのは昨日のこと。webのニュースを見て、なにかの冗談かと思ったのだが、どうやら真面目な話らしい。また夏だけではなく、どうやら冬の電力も不足する可能性があると言うから、本当に心の底から驚いた。一体どこの後進国の話なのだろうか。

そもそも話の順序が違う。まず初めになぜ電気が足りないのか、その理由を説明するべき。その理由が誰が聞いても納得できる理由で、不足する電力に対しても最大限確保するために動いているが、それでも足りないので協力してほしいというならば話は分かる。だが話していたのは「火力発電所が休廃止で止まるから」という説明のみ。たぶんその背景にはロシアの侵略行為の影響で、石炭や天然ガスの供給量が減っていることは薄っすらと理解するが、これはあくまでも個人が良い方に想像してあげているだけのこと。

またどこかの知事さんは、「最新型のエアコンに買い替えて節電と省エネに心掛けて欲しい」と、話していたが、そもそもなぜ国の愚策の尻拭いを、個人のお金で補わなければならないのか? そこに対する説明は何も聞かされていない。百歩譲ってエアコンを買い替えようとしても、最新型のエアコンは一体どこにあるのだろう。今、街の家電量販店に行って、エアコンの在庫の有無とその設置工事が何時できるかを聞いてみたらよい。希望する最新型のエアコンなど、どこにも無いし、この次にいつ入荷されるかさえ分からない。さらに今あるエアコンを取り付ける業者さんの予定がいっぱいで、エアコンがあっても工事が出来ないような状況なのをご存じないのであろう。

エライ人はお気楽で羨ましい。周りの事情や様子を何も知らず、何も聞かず、何も見ることもせず、自分の都合だけで物を言い、それが一番正しいことであるかのように振舞うのは、みっともないので止めていただきたい。

そもそも10年間止まっている原発再稼働に対する検討は、どうなったのですか。東日本の震災で原発事故による大きな被害が今もなお残っているのは、重々承知している。だから10年間止まったままの状態で、今もなお稼働できていないことも知っている。だからこの国では二度と原発は再稼働させず、将来的にも一切利用することなく電気の供給を賄うというつもりなのですか。少なくともこの10年間、ただの一度もその辺りに関する方針や将来像あるいは日本の電力ビジョンらしきものが話し合われ、国策としてどう動こうとしているのかを見せて貰った記憶はありません。

それなのに、「エアコンを最新機種に買い替えろ」とか「冷蔵庫の設定温度を」「冷蔵庫の中身を半分にして」なんて、国のトップが恥ずかしげもなくよく言えるなって感じです。エアコンは上海のロックダウンが大きく影響しているのは今は常識の話。この先、流通が元に戻る目途が立っていないのも常識。少しは勉強……というか、周りを見るべきです。

ついでに言っちゃうけど、ZEHが高気密住宅が! と、それが最善の家造りと推進しているのも、なんとも奇妙な話だと気付かないのだろうか。そうした家の特徴は密閉性高く閉じた家の中で、家電製品の力を借りて暮らしなさいというもの。太陽光だとか風力だとか言っているけども、それらはあくまでも補助電力であって主電力は送電されてきたものです。その送電が安定的に供給できない、あるいは止まったり計画的に停電するかもしれないとなれば、こんな家はただの大きなサウナでしかない。どんなに立派なお題目を唱えても、揺るがない安定したインフラが整備され供給されて初めて成立するのです。今の状態では怖くて「これは良いですよ」とは、クライアントには口が裂けてもお薦めできない。

夏が猛暑ではないことを、神様に祈るばかりです。