静岡県三島市に本社がある「伊豆箱根バス」。三島・沼津は勿論、熱海市や小田原箱根間を結ぶ路線も走っており、地元の人にとって無くてはならない足。このバス会社の定期路線「伊豆・三津シーパラダイス線」の車内で今年の4月に騒動があり、その結果、バス会社としては初めての行政処分が下されました。
話は今年の4月、マスクを着用していない女性がバスに乗車して来たので、運転手さんがマスクの着用をお願いしたのですが、女性は「付けない」、運転手さんは「付けて下さい」の、押し問答が起こったそうです。その時、車内には20名を超える乗客が乗っており、運転手さんは仕方なくバスを停留所ではない場所に停め、その女性に降りて貰ったそうです。この対応が気に入らなかった女性が監督官庁に訴えて、その結果、中部運輸局がバス会社に立ち入り調査。結果的にバス二台を25日間の使用禁止という行政処分を下しました。
報道でしか事の顛末は分かりませんので、多少のバイアスが掛かっていることを承知で印象を言えば、「行政処分は遣り過ぎでしょう」と、思ってしまいます。女性にも特段の事情があったのかもしれませんし、たんなるアンチ・マスク派の方だったのかもしれませんが、それでも事を荒立てる以外の収め方はあった筈です。勿論、運転手さんにも違う対応があったかもしれません。ですが唯一、想像できるのは、他の20名以上の乗客の方に、迷惑が掛かったことは確かです。バスの遅延は勿論、不快な状況を見せられた顛末、この責任は原因者である女性にあると思います。少なくとも運転手さんは乗客の安全を守り、運転する義務を負っているのですから、その時点での決断は運転手さんの裁量に拠って然るべきです。一方的にバス会社だけに行政処分を命じるのは、間違っていると思います。
これは行政処分に対しての考え方ですが、マスク着用に関しては少し違います。バスは飛行機と違って窓を開けることも出来るし、一人で乗っている場合、誰とも話さずに過ごすことが普通です。つまりマスクを必ずしも着用しなくても、問題無かったのかもしれません。大切なことは「マスクを着用することではなく、誰とも話さず飛沫を飛ばさないで貰うこと」だった筈です。少し視点を変えるだけで、融通が利いたのかもしれないことが残念です。
ただ行政の対応は間違っていると思います。一度こうした悪しき前例を作ってしまうと、悪意を持って真似をする不届き者が必ず現れます。その時、バス会社は、運転手さんは、毅然とした態度で乗客を守ることが出来なくなります。勿論、これはマスク着用の話だけをしているのではありません。バスという公共交通機関の安全は、一体誰が現場で守るのかという話です。コロナ禍で弱っているバス会社に対して、頓珍漢な対応をしていると思えてしまうことが残念です。
観光地伊豆には親戚もたくさん居ます。三津シーパラダイス(水族館ですね)にも、何度も遊びに行ったことがあります。(ちなみに三津と書いて みと と読みます)。今はもう居ませんが昔はラッコが沢山いて、一日中眺めていたこともありました。コロナ禍の影響で疲弊している観光地ですが、早く普通の生活が戻ってくることを願っています。