名古屋市中区に建つマンションの7階から、1歳と2歳の二人の子供が窓の手摺を乗り越えて転落するという事故がありました。転落したと思われる窓は、床から窓の下までの高さが80cmあり、その30cm上に丸パイプが設けられていたそうです。近くには棚のような物が置かれていたとの情報もありますが、それが台になったのかは不明です。同様の転落事故は過去に何件もありましたが、本当に痛ましく残念な事故だと思います。
こうした転落事故が起きるたびに、建築的には手摺の高さや手摺子の間隔(縦の棒の幅の問題)が話題になります。また窓の近く、あるいはベランダの手摺の近くに、台になりそうな物が置かれていなかったかが話題になりますが、本当に原因はそれだけなのでしょうか。自分の家を見回してみると良いと思います。本当に窓の近くに、台になりそうなものは置かれていませんか? 家に小さなお子さんが居ないから、大丈夫なだけではありませんか。
私の家の窓は腰高窓で、床から40cmほどの位置に窓があります。座るのにちょうど良い高さで、そこから80cmほど高い位置に手摺パイプが設けられています。これ、小さな子供が居ないから事故にならないだけで、けして安全な形状ではありません。ですが基準法には違反していません。転落事故のあった窓も、ほとんどが基準法には違反していないと思います。
それではなぜ子供は転落するのか? 台の有無ではないと思っています。また手摺の高さをあと10cm高くしても、20cm高くしても、きっと子供はよじ登ってしまうでしょう。どこかのニュース番組で検証していたのを見たことがありますが、5歳児ぐらいになると手摺の高さが150cmでも、時間を掛ければよじ登ってしまいます。そこに台が無くても、裸足だったりしたら余計に上りやすいそうです。勿論、台になる箱やベッド、椅子などは置かれていないにこしたことはありません。ですがそれ以上に子供では開けることのできない第二の鍵を、設置するぐらいの配慮が必要なのかもしれないと考えています。
また、ひょっとすると子供たちはもう、高い場所は怖くないのかもしれません。私、高いところは全然ダメなので、仕事で現場に行った時にも屋根の上に上るのは、とっても苦痛です。仕事だから仕方なく登っているだけで、本当に高いところは苦手です。ですが生まれてからずっと、地上からはるかに高い場所で暮らしていれば、その高さを怖いと感じなくなっているのかもしれません。怖くなければ、手摺ぐらいよじ登りますよね。
子供は何かを求めて、自分の背丈より高い手摺をよじ登ります。そこに何を求めているのかは分かりませんが、「子供とはそういうもんだ」という前提で、守ってあげる必要があるのかもしれないと思っています。