長くミステリを読んでいると、マザー・グースの童謡に触れる機会が少なからず訪れる。それは洋の東西を問わず、昔からミステリの重要な素材として、マザー・グースの童謡を利用した作品が多いからだ。
例えばクリスティの名作『そして誰も居なくなった』は、マザー・グースの『10人のインディアン』が重要な鍵となっている作品だし、日本のミステリ作家・綾辻幸人氏には『どんどん橋、落ちた』と言う作品があるが、これはマザー・グースの『ロンドン橋落ちた』を文字ったもの。きっとマザー・グースの持つ独特の世界観がミステリ作品を演出するのに、とても役立つからかもしれない。
本書『誰がコマドリを殺したのか?』は、そのままマザー・グースに同名の『誰がこまどりを殺したの?』があるという作品であり、著者のフィルポッツと言えば、名作『赤毛のレドメイン家』の著者でもあるので、読む前から面白いに決まっているような作品なのだが、実は長い間絶版になっていて読むことが出来なかった作品でもある。
と言う訳で期待値を上げまくって読む前に、蛇足を一つ。
私はマザー・グースもフィルポッツ知らない頃に、「誰がこまどりを殺したの?」というフレーズだけは知っていた、しかも節付きで。それはTVアニメ『パタリロ』で、主人公のパタリロが、誰が殺したクックロビン」と、歌っていたのを観ていたからだ。たぶん小学生の頃に観ていたアニメなので記憶も定かではないが、たしかに「コックロビン」ではなく「クックロビン」と、歌っていた。
「誰が殺したクックロビン」
「それは私」と雀が言った
「私の弓と矢羽根で私が殺したクックロビン」
みたいな歌だった。
今思い出すと、子供が観るには問題がありそうな歌詞だが、当時は時代が違ったのね。
さて本書の感想はと言うと……、万人が面白いと評価するとは思えないが、古典好きには十分楽しめる作品でした。トリック云々のコテコテの本格ミステリと言うのではなく、かなり恋愛小説の色が濃い感じの作品。
主人公の医師ノートンは、街で見かけた美女ダイアナに、一目で恋に落ちてしまう。莫大な財産を相続する権利を捨て、自分を心をから愛してくれる女性を捨て、強引とも思えるダイアナとの結婚に踏み切るのだが、幸せな日々はそう長くは続かなかった。――と言う感じで、かなり複雑な恋愛事情が物語の軸にある。でもその軸が確りしているからこそ、「ほぇ~」というオチに繋がっている。
GW、出掛ける方は旅のお供に。
出掛けない方は、本の世界感を旅してみては如何でしょう。
コメント
探偵長様、こんにちは。ご無沙汰しております。
わたしもパタリロですwていうか、最初は元ネタがあることを知りませんでした(苦笑)
実はこの作品、未読なんです恥ずかしながら。ちゃんと読まねば。
ところで、いま箱根山が不安なことになっていますが、お近くにいらっしゃる探偵長様にも何かご不便なこととか出ていませんか?
はるか昔ですが、わたしも箱根に二度ほど観光に行ったことがあるので心配です。
なんとか終息に向かうように祈ってます……。
みけねこさん、御無沙汰しております。
パタリロの影響は凄いですね(笑)
本書はミステリを数多く読まれている方ならば、なんとなく展開は想像できてしまうかもしれませんが、60年に書かれた作品であることを考えれば、お手本的な作品であることは確かですね。個人的には好きな作品でした。
箱根の火山活動が活発になったのを知らずに、29日に大涌谷にくろ卵を食べに行きました。かなりの観光客だったのですが、これから夏の行楽シーズンに向けて、大きく影響が出ることでしょう。
生活には何ら支障がありませんので、早く落ち着くことを祈っています。お気遣い、ありがとうございます。