開成町で工事中の建売住宅は、木工事を完了していた。
今までは建売住宅の計画といった仕事は、お引き受けしていなかったのだが、思うところあってご協力させていただいた建物。
建物面積と部屋数が決められ、使用する材料や工法などに制限がある中で、何が出来て何が出来ないのかを知りたかったのです。
正直言って、思っていた以上に出来ないことがたくさんある。
でも出来ることも、思っていた以上にあった。
たとえば建具。
居間に併設して設けた小上がりの和室は、障子を直角にぶつける形の納まりとしている。
直角にぶつかる建具が、部屋を閉じる形になっている。だから敷居の溝も一本だけ。
こんな建具の既製品はどのメーカーでも作られていないので、建具屋さんに制作して貰った。
普段の設計作業の中では、こんな形の建具はままあるが、既製品の建具だけを使う建売住宅には珍しい納まりだ。
各所に設置した扉も少しだけ違う。
一般的には高さ2.0m程の扉を設置することが多いが、今回は全て高さ2.4mの扉。
さらに扉の枠(三方枠)を隠す形の製品を採用し、枠に該当する部分は壁と同じ仕上げを施し、スッキリさせたいと考えた。
窓枠(額縁)も同じように消してみる。
窓の左右と上の枠を無くし、下の受け皿だけを設けている。
別に凄く難しいことをしている訳でもないし、驚くほど費用が掛かる訳でもない。
本当に小さなことだけど、少しでも綺麗に造ってみませんか? と、考えただけ。
ほんの小さな気遣いが、購入希望者の琴線に触れればいいと、思ったのです。
家は買うものではなく、建てるものだという思いは変わってはいませんが、それでも様々な事情で家を買われる方がいることもまた事実。ならば少しだけ、その家に「想い」を入れてみたいと考えました。
出来ることも出来ないことも沢山ありますが、住む人の顔が見えない家を考えることが、一番難しいことかもしれません。