Essay 17 賃貸アパートの行く末

「家を建てることが、男子一生の仕事」と言われ、信じられていた時代は、終わったような気がする。(設計の仕事をしながら言うべき事ではないが・・・)最近は「生涯賃貸」と言う考え方も広がり、家を持つことが最善の選択肢では無いと、考える人も増えているようだ。



そうなると、アパート経営者は諸手を上げて喜べるはずなのだが、現実はどうも違うらしい。私の仕事場の周りでも、年々賃貸アパートは建ち続けるが、その反面空室になったままのアパートも目立つのが現状だ。

1度、空室になると、なかなか新しい入居者は見つから無いらしい。でも、賃貸の需要は有る・・・。
それじゃあ、このギャップは何?と考えてみた。




例えば、同じ家賃で利便や環境に大差が無ければ、借主は新しい建物を選ぶに決まっている。同じような間取りで、同じような家賃。何が悲しくて、いつまでも古いアパートに留まる必要があるのか?



つまり、新しいアパートを建てると、新築当時は満室になるが、3年もすれば空室が出てくる事になる。この繰り返しが、何を語っているのか懸命なアパートオーナーにはお分かりな筈。


そう、つまり賃貸空間が均一化し、ただの場所貸しになっていると言う事なのでしょう。それが証拠に、新聞のチラシを見てみたら良い。どのアパートも大抵、同じ間取り、同じような家賃。どうして古い建物を選びますか!ってんだ!・・・失礼・・・



アパート・オーナーにしてみれば、建設資金返済の資金計画も練られたでしょうが、空室率を甘く考えすぎていると、現状に合致せず経営自体が成り立たなくなる。これは、単純に読みが甘いが上の失敗だろうけど、問題は空室率を高く設定することでは解決できないと思う。



それでは、一体どうすれば良いのか?簡単でしょう~。借り手が、空室になるのを待ってでも、そこに入居したいと思わせるような建物にすれば良いのですよ。



アパートは、大きく分けると3つの間取りしかない。ワンルーム・2DK・3LDKの3つです。ワンルームは独身・20代前半の若者をターゲットに作られている。つまり、ターゲットが明確だ。ところが、2DKや3LDKと言う間取りには明確なターゲットは無い。独身者が住もうと、新婚が住もうと家族5人で住もうと一向に構わない。こんなコンセプトの建物は、飽きられるに決まっている。



少なくても、間取りに汎用性を持たせること・外構計画や建物デザインに配慮すること・建物に特色を持たせること。この程度のことが出来ていなければ、空室だらけの建物になっても仕方が無いと言わざるを得ない。



でも、建てる側・設計する側に、その問題意識と提案能力が無ければ、これは難しいかもしれませんがねぇ~?敷地目一杯に建物を建て、『レンタブル比最優先』なんて建物が、いつまでも大手を振っていられる時代じゃないと思いますが・・・。

空間としての『床』を貸す時代から、プラスアルファされた『ソフト』の付加価値が要求される時代なんですよね。だから、「住宅なら自分の建物だから自由な発想が出来る」けど、賃貸だから「自由な発想は出来ない」なんて言う考え方は、もうそろそろ辞めにしませんか?
そこのオーナーさん?