Essay 35 トイレ

家の中で落ち着ける場所は?と質問をすると、BEST3に入ってくる場所にトイレがあります。何故、あんな狭い場所が?と思うのですが、あの適度な狭さと、鍵を掛けた瞬間に生まれる自分だけの場所としてのイメージ、そして生理的な欲求を満たせる満足感なのでしょうね。





トイレと言うのは面白い場所で、例えば一人暮しのお兄ちゃんが、彼女以外の女性を部屋に入れた時に、物証を残してしまうのもトイレだったりすることがある。(経験者談)

有りがちな、トイレット・ペーパーを三角に折ると言うようなことで無く、髪の毛が落ちていたり、スリッパの向きが違ったりと、使う人の個性や生活体験が、如実に出てしまう場所かもしれません。



また、昔なら「地震が来たらトイレに逃げ込め!」と言われたし(知らない?ウッ!ジェネレーション・ギャップが・・・)、最近では、トイレの事をサニタリーとか呼んだりする人もいて・・・嫌らしい。



ここ数十年の家の変革の中で、トイレほど大きく様変わりした空間も珍しいです。その原因は洋便器の普及なのですが、ほんの30年ほど前までは、何処の家庭も和便器でした。しかも、汽車便ではなく(一段高くなっているやつ)床に、直接便器が埋まっているタイプのものが多く、男の人の小用は非常に狙いにくかったのを覚えています。


トイレット・ペーパーの普及だって、つい最近なんですよ!その前は、ちり紙がトイレの隅に積んであったんですから~。(えっ?知らない?じゃトイレだけに聞き流して・・・うまい!)



また、いくつもある部屋の中で適度な狭さが、安心感を生むのもトイレだけです。あれが4帖半くらい広い部屋に、ポツンと便器が置いてあったら、とてもじゃないですけど、落ち着いて用は足せないと思います。


20年ほど前に、六本木にあったDISCOで、トイレがダンス・ホールの中央に有ったのを覚えています。全面マジックミラーになっていて、中に入ると外の人が丸見えなんです。勿論、外からは見えませんが、それでも気になって仕方なかったですね(笑)



だから女性がトイレに入ると、外からは決して見えないんですが、ジ~ッと見えている振りをして遊んでいたのを覚えています(笑)



話が反れてしまいましたが、住宅を考える時にトイレに関して気を付けたい点が、いくつかあります。勿論、私の拘りですがね。



まず窓の大きさと位置です。大きな窓は、開放的で気持ちが良いですけど、トイレと言うのは大抵、家の北側にあります。(例外も有るのは承知です)つまり、北側の家が居間でくつろいでいると、トイレの灯りのON/OFFが丸見えなのです。


特に大きな窓が付いている場合、夜はトイレの明かりで、その動きがシルエットになって見えてしまうのです。判りますよね?特に女性は?お互いに嫌でしょう?


ですから、こう言う事を避けるために、窓の位置をトイレの中心からずらすと良いと思います。また照明器具も外壁側の壁から、中を照らすような配置にすると影の写りこみが無くなります。

窓を大きく取りたい時は、高い位置に設けるか、縦長の窓を取ると明るさが確保できます。トイレの窓と言うのは、景気を楽しんだり、窓の外を行く人と会話をするためのものではありません。純粋に自然光の確保と、換気からの必要性なのです。勿論、開放感を望むためでも有りますが。ですから、窓の開閉が出来れば高い位置だろうと、細長い窓だろうが機能が確保できれば、良いのかもしれません。

それから、トイレと言うのは以外と小物が多くある場所です。掃除用具や洗剤、買い置きのトイレットペーパーに、生理用品まで。中には灰皿とタバコ、新聞や本まで置いてある家も有ります。さて、これだけ多くのものを何処に仕舞えば良いのでしょう? 

よく扉の上に吊戸棚の有る家を見ますが、あれも一つの手でしょう。でも、女性の場合だと手が届かないし、掃除用具は置けませんよね。だから、トイレの幅や奥行きをあと30cm広げて、物が仕舞える棚を造ってしまう場合もあります。(これ、トイレの掃除をしない男性には判りづらい話かもしれません)

トイレ全体のスペースを広げなくても、小物を収納する部分だけ確保できれば良いのですから、以外と簡単に出来るものです。もし、どうしても出来ない場合は、壁の厚さを上手に利用する手もあるでしょう。現に、そんな商品も売ってますしね。

それから扉ですが、これはもう外開きが常識ですよね。冬のトイレと言うのは、以外と寒いもので居間などの暖房の利いた部屋との温度差で、倒れてしまうような場合もあります。(特に高齢者は気を付けてくださいね)

さて、トイレで倒れてしまった方を助けるには、内開き扉ではマズイのです。倒れた方が邪魔になって、開けられないからです。ですから、トイレの扉は外開きか、引き戸が望ましいですね。

また、トイレの中だけに暖房器具を入れて、温度差に対応するような場合、トイレの壁や天井に断熱材を入れておくぐらいの配慮はして下さい。いくらでもないですから。

それから、壁の下地材料ですが出来れば、石膏ボードではなくコンパネを使った方が良いでしょう。これは後々、手摺を設置する時の配慮です。また、仕上げ材に関しては水洗いできるか、目地の少ないものが、トイレの匂い対策には有効です。これは、前にも書いたと思いますが、目地の中に入る匂いの元を、掃除しやすくするためです。

最後に、1,2階にトイレがある場合は、特に2階の配水管の位置に気を付けてください。排水の音は以外と大きく、夜ともなれば、寝ている家人を起しかねないですからね。

この他に配慮すべきポイントは、スイッチや照明器具の選択ですが、それはここまで書けば、どんな事なのか大体想像が付くと思いますので割愛します。(本当は長くなったから・・・笑)

まぁ、なんにしてもトイレのポイントは清潔に保ち、落ち着ける空間であると言う事ですね。ですから家全体を見なくても、トイレだけ見れば、どのくらい気を使った設計がされているのか判ってしまいます、私。