Essay 56 欠陥住宅の定義

え~っと、またまた「欠陥住宅」の話です(笑)でも勉強したばかりなので、読んでね。


所謂「欠陥住宅」を掴まされた被害者の人は、3度泣くと言われています。まず始めに、我が家が、欠陥住宅である事を知り泣かされます。補修や改善を求めるも、のらりくらりと逃げ回る施工業者に号を煮やし、ついには司法の場へ持ちこむのです。当然、「正義は我が手に!」と意気揚揚と裁判所に向かうのですが、請負契約と言うのは、未だに建設会社を擁護するもの・・・。つまり、法律の分厚い壁に阻まれ、な~んにも悪くない建築主が、芋を引かされる羽目に・・・。ここで2度目の涙が。


さらに悪い事に、唯一の見方!「貴方だけが頼りです!」と頼みの綱だったはずの弁護士までもが、「いやぁ~、建設業界の事は良くわかんなくて~。この辺で和解しましょうよ~」となんとも、頼りない言葉・・・。つまり、過去の裁判事例や建設業界の仕組み、建築の専門性の壁に阻まれる弁護士も、イマイチ ちんぷんかんぷん な訳です。そして、3度目の涙が。天下の007でさえも、2度しか死ななかったのに、欠陥住宅を掴まされたばっかりに、3度も泣く羽目に。


しかも過去の判例を見ると、どう考えても建て替えないと危険な欠陥住宅でも、裁判所が下す補償額の裁定は雀の涙。思わず、「なんじゃそりゃあ?」と言いたくなるような内容で、せっかく裁判には勝っても、補償額では補修も出来ない始末。それで、下手すりゃあ「裁判費用は折半ね」なんて、言われたら目も当てられない。


なぜ、こんなに「欠陥住宅裁判」が難しいかと言えば、どうやら理由は2つあるらしい。その一つは「欠陥の証明は住み手がしてね!」と言う現実。(こんなのあり?)だって、素人が「欠陥の証明」なんて、雲を掴むような話でしょ?何処をどう探したら、弁護士以外の味方がいるのか?はたまた費用はいくら掛かるのか?「なんで、あたしが出さにゃあならんの?」って事になる。


二つ目は「欠陥の定義」の問題。例えば、壁紙が汚く剥がれてしまっている場合。「酷すぎる!欠陥住宅で訴えてやる!」と騒いでみても、それだけでは「欠陥住宅」とは呼べません。建設会社を呼びつけて、怒鳴ってみても「はいはい、壁紙が剥がれてると言う状況は、確認しましたよ。オシマイ!」と言う事に成ってしまうのが関の山。


じゃあ、床が傾いてた場合はどうでしょう?「きゃ~~~、ゴルフボールが勝手に転がって行く~~!欠陥だわ~!」と叫んでみても同じ事。「傾いている」と言う事象を、認識しただけの話なんです。


法律で言う「欠陥」には、「意匠・美匠上の欠陥」と「構造上の欠陥」の二つがあります。この場合、直ぐに目に付くのは「意匠上の欠陥」です。例えば、汚れや破れ、傷や破損と言った物がそれなのですが、残念ながら現状の司法の場では、「欠陥住宅」と判断される事は少なく、「受任限度の範囲内」と判断されてしまいます。つまり「我慢してね!」って裁判官に言われちゃうわけ。


だから「欠陥住宅」として裁判に持ち込むのなら、「構造上の欠陥」として、闘った方が勝ち目があると言う事なんです。建築基準法に乗っ取って書かれた設計図との食い違いや、確認通知書との仕様の違いなども、これに当たります。もっとも出来あがった建物の柱や梁、あるいは基礎の配筋までもを、確認するのは容易な作業ではありません。費用も時間も掛かるでしょう。だから、事実認定が難しいのです。


早い話が、「欠陥住宅」に引っかかってしまった瞬間に、正義の部分での勝ちは掴める事は有っても、費やした時間・お金・労力・傷ついた心を100%癒す事は出来ないと言う点で、負けなのかもしれません。


残念ながら、現状の「請負制度」と「司法」の関係と言うのは、そう言う事なのです。だから、私は「欠陥住宅」での後手の対応よりも、「良い住宅」を建てるという「予防あるいは事前の情報」として、お話しているのです。


正義なき時代・・・定義なき欠陥。普通の人には、判らないブラック・ボックスの中での話なのです。同業者として、慙愧の念に耐えませんが・・・。


「じゃあ、どうやったら欠陥住宅を掴まないのよ~?」と、憤りを感じる貴方!私、何度も申上げているように「設計と施工」を、分離すると言う事が必要なのです。


お手軽?安い?面倒がない?そんな理由が、「欠陥住宅」を掴まされたときに、自分の心の中で、「しょうがなかったのよ・・・あの時は、それで良いと思ったのに・・・」と、納得できる理由ですか?


欠陥住宅なんて言うレベルの低い、粗悪品を造って逃げる業者が1番悪いんです。これは事実です。でも残念ながら、そんな程度の業者が、ゴロゴロいるのも現実です。だったら、貴方が信頼できるオブザーバーを選ぶしかないでしょう?


しっかり考えて設計し、正しく造れる業者を選び、その上で間違いやミスが無いかを、貴方の変わりに監理・助言してくれる設計者が必要なのです。


それとも、ねじり鉢巻で勉強して、インチキ業者に負けない知識を付けて、それで「インチキ業者」に頼むのですか?なんか、矛盾してません?なんとも、切ないなァ~この話・・・・・。欠陥住宅の話は、当分止めよっと。でもなんか、違わない?この業界。