エッセイの68話で品確法とは一体何なのかと言う、お話に触れました。随分前だったので忘れちゃったかもしれませんね?
簡単にお浚いすると、住宅における建物の質を確保すると言う事が目的の法律です。その1つが作る段階での質の確保である「性能評価」。そして、もう1つが完成した建物を、長期的に良い状態で保ちたいと言う「10年保証」。この両輪が上手く回っていくと、「良い状態で作られた建物が長く持つ」と、至ってシンプルで解りやすい所を狙っている訳なんです。思い出して頂けましたか?
「10年保証」に関して解り難い点は少ないと思います。建物を作った業者が「10年間は保証します」と言う事だけの事なのですから。もっともどの部分を保証するのかと言う点に関しては、説明が必要だと思います。
瑕疵担保となるのは基本構造の部分だけに限られます。基本構造部とは
●構造耐力上主要な部分=柱・梁・耐力壁・地盤・土台等の構造躯体
●雨水の浸入などを防止する部分=外壁・屋根の仕上げと下地・開口部など(下図参照)
例えば、こんな場合でも瑕疵担保の対象になります。
造成地を買ったAさん。早速知り合いのB工務店に住宅の工事をお願いしました。建物はあっと言う間に出来上がり喜んだのも束の間。地盤が軟弱だった為、建物が沈んでしまいました。
Aさんは怒ってB工務店に怒鳴り込むと「造成はうちの工事じゃないから知らないよ~」と言われ、Aさんは泣きながら帰って行きました。めでたしめでたし。失礼しました!めでたしでは有りませんね。
本当は、このB工務店は基礎の作り方に「瑕疵」が有ると判断され、保証の対象となるのです。だからAさんは保証してもらいました。めでたしめでたし、と言うことです。
では工事業者が倒産や廃業してしまった場合はどうなるのでしょう?
実は残念ながら自分で直すしかありません。ただし!!!ただしです。ここが大事な所です。工事をしてくれた施工者が保険制度を使っていた場合は、補修費用の大部分が戻ってきます。だから工事を依頼する際には、この辺りにも配慮してください。もっとも間違いなく造れば、何の問題も無いのは今と同じ事ですがね。
さてと!解り難いのはここからです。前回もここの部分に触れずに終わった訳なのですが、触れたくないのも本音です(笑)だって難しいんだもん!でも今回は頑張って、ご説明しましょう。
「性能評価」とは簡単に言えば、建築主が建物の出来上がり具合を細かく指定をして仕上げて貰うと言うことなのです。(うぅ・・・、今一簡単じゃないなぁ~笑)
こう言う例えはどうでしょう?
ステーキ屋さんに行ったとしましょう。今までならば「ステーキ下さい」と注文すれば、お店が考えた量や質のステーキが黙って出されました。それを貴方は食べていただけなのです。
性能評価は違います。
貴方はステーキ屋さんに入ると「肉は松坂牛のはらみを、ウェルダンで250g焼いて下さい。下味に使う塩は「塩化ナトリウム塩」で構いませんが、胡椒はあら引きの黒胡椒を使ってください。それと香り出しに使うワインは62年のブルゴーニュでお願いします。あと、添え物には北海道の男爵芋とにんじんのバター炒めを、お願いしますね。
なぁ~んて具合です(笑)どうです?面倒くさいでしょ~。でも建築主自身が選定すると言う事は、こう言うことなんですよ。で、この結果どうなるか?今度はこれをご説明しましょう。
まず値段が高くなります。当然、建築主の注文内容が高くなればなるほど、その完成品の値段が高くなるのは仕方ない事です。
それから、こんな面倒な注文を受けてくれる、お店を探さなければなりません。100人のお客さんが100通りの注文を出したら、それに対処しなければならないのですからね。
それに何より大切なのは、お客さんの注文どおりに出来ているのかを判断しなければなら無いと言うこと。だって、ワインがブルゴーニュだかブルブルだか解らないでしょ?(笑)だから調理人の他に、もう一人「うん!確かにこれは注文どおりに出来ている」と証明してくれる、もう一人の鑑定人が必要になるわけです。そして、この鑑定人の鑑定料も「ステーキ代」にプラスされるわけです。
さぁ!大変な事になりました。ここまでを読んで「こんな面倒くさい事を誰がやるのか?」と言う疑問と「今までと同じじゃん?」と言う二つの思いが、貴方の頭の中を飛び回っていませんか?私は飛び回ってます。
この面倒臭いと言うことだけに拘れば、それは「素人の貴方が一人でやろうと考えるから面倒臭い」と言うことになるのです。これだけ専門的に、かつ本質的な話をするときに、今まで以上に「素人判断」が通用しなくなるのです。それは造る側の施工者も同じです。施工者は出来上がったときの建物の管理よりも、作っている最中の建物の管理を今まで以上に気を使わなければいけません。完成した後に、「シマッタ~」では検査に通りませんからね。
ここで重要なキーマンになるのが「鑑定人」なんです。この鑑定人が正しい評価をする為には、建物がどんな建物なのかを正しく認識していなければなりません。書類の上っ面だけを見てチェックしているようではダメなんです。
じゃあ、「その建物を一番認識している人が鑑定するのが一番」だとは思いませんか?それが建物の設計者だと思うのです。設計図も書いて工事中の現場まで、細かくチェックしてくれたとしたら、一番ベストだと思いませんか?
そう言う立場に慣れれば「設計者」は今までのように「建設会社の下請け」と言う立場から脱却でき、施主側に近い本来の立場に立てると思うのです。施主だってチンプンカンプンな性能評価と言う部分、ひいては建物本来の相談役として認知することになるでしょう。ここまで来れば、建物の質や性能を正しく作る形体が整うと言うもの。
施主も解らないまま不明瞭な工事代金の増額をしなくて済みますし、鑑定人を別の人間に頼むと言うよりは安く抑える事が出来ると思います。施工する側だって、万が一のミスをなくし指定された通りの建物の質を、社内の人間がチェックするのではなく、第三者でありその建物の事を一番熟知している人間がチェックしてくれれば、計費の削減や円滑な作業、結果的に信頼までもを手に入れることが出来ます。
うん、完璧だ。
チョット長くなったので続きはPART3で、お送りします。