Essay 114 階はかい

最近は、首都圏などの狭い土地じゃなくても3階建ての住宅や、地下室を持つ3層建ての住宅か増えているようですね。これは多分に住空間に対する要求が増している事と、国と建設会社の陰謀に他ならないのではないかと密かに思っているのですが・・・考えすぎ?


何故って、もともと「3階建て」の建物を望んでいた方というのは、狭い土地で、どう考えても2階建てでは生活するのに耐えうる空間を確保できない・・・だったら、もう1階建てたいと言う希望から始まったものですよね?


国も「そうか・・・ならば基準法も、そのように改善しよう」と言うことで、準防火地域内の木造3階建て住宅を認めたり、地階における居室を認めたりし始めたわけだと思うのです。

当然、こう言う事への対応にあざとい・・・失礼!素早い対応の住宅メーカーは次々と3階建て、あるいは3層建ての建物を企画販売し始め、それがどんなに社会ニーズに合ったものかをCMする事になるわけです。と成るとどうなります?


テレビを始めとする広告媒体で「3階建ては最高~!」と連呼されれば、その気が無かった人も「なるほど・・・そんなもんかも?」と成るわけです。


狭い土地に有効に建物を建てようとすれば、上や下に伸びていくのは自然の摂理。これ事態を悪い事だとは思いませんし、否定する気もありません。でも!でもチョット待ってもらえませんか?
「2階建てより3階建て・・・そこに愛はあるの?(笑)」


言い方に多少御幣は有りますが、単刀直入に言えば、こう言うことかもしれません。1つの階が狭い場合、何も考えずにプランを考えていけば、当然狭い個室が詰め込まれて行くだけです。しかも階段と言う場所に工夫がされていなければ、単に階と階を区切ってしまうだけの障害物にこそなれ、決して良い効果はもたらしません。その結果、階層ごとに細分化された居室が並び、上下のコミュニケーションも取れなければ、1フロアの中でさえ密閉された空間になりかねない可能性も秘めています。


つまり、大切な事は3層、あるいは4層と高層化する住宅の場合の縦動線、つまり階段に対する配慮は2層の建物よりも考えられていなければならないと思っているのです。場合によっては階段をサポートするための「吹き抜け」も必要かもしれません。


「ただでさえ狭いのに、吹き抜けで無駄な面積を取られたくない」と言われるかもしれませんが、そう言う方法も必要な場合が有ると言う事を言っているので、絶対に設けなければいけないと言っているわけでは有りません。


上下階の繋がりと言うのは水平方向の繋がりの確保より難しい場合が多く、上手に作ればこの上ない劇的な空間に変わりますし、何も考えないで作れば暗く寂しい家になりかねない危険さえ持ち合わせています。


「そこに愛はあるの?」と申し上げたのは、そう言うことです。もし今、3階建て住宅をお考えの方がいらっしゃるのなら、そんな事を設計者とお話し合いをする事も大切だと思います。


今回のエッセイのタイトル「階はかい」を「階は、階」とお読みになった方は素直な方ですし、「階、破壊」とお読みになった方は、私に近いかもしれません。 

まぁ、それは冗談ですが、昔から「住みやすい家」とか「居心地の良い家」と呼ばれる建物は、大抵平屋建ての建物でした。「サザエさんの家」だって平屋ですよね?それだけ建物の階層を増やす場合には、考えなければいけないと言うお話でした。 家を考える時の一つの参考までに。