Essay 89 庭の目的

クリスマスです。街のあちこちで、イルミネーションの飾り付けが賑やかです。最近ではお店やデパートだけじゃなく、個人の家の庭でも随分立派な飾り付けが目に付いて、なんとも賑やかな感じがします。


それにしても近頃は25日のクリスマス当日よりも、24日の「クリスマス・イヴ」の方が威張っているのはなぜでしょう?(そう感じているのは私だけでしょうか?)まぁ、宗教に関してはノンポリの日本ですから、そんなことはどっちでも良いんですけどね。


ところで庭にイルミネーションを飾る家が多くなってきたのを見て、今回は少しだけ庭のお話しに触れてみましょう。一口に庭と言っても、その用途によって大きく分けると5つに分かれると思います。


【その1 観賞用の庭】
日本では元々、庭と言えば観賞用の庭を指していたと思います。古くは平安の時代から、宗教観が確立し始めた鎌倉・江戸時代に作られた神社仏閣や、茶道における茶室建築などに付随する庭は、全て観賞用の庭と呼べると思います。


じゃあ、この考え方が現代住宅に受け継がれているかと言えば、答えはNO!今の住宅に、純粋に観賞用の庭を作れる家など、特権階級の一部の家だけでしょう。ただ考え方として、提示しておきます。例としては「日本庭園」が、その代表的なものでしょう。


【その2 遊び空間としての庭】
例えばバーベキューをしてみたり、クリスマス・ツリーを飾ったりするのは、この考え方に入ると思います。その他にも、子供とキャッチ・ボールをしてみたり、夏にプールを設けて遊ぶのもこれに該当すると思います。たぶん現代住宅に設けられている庭への要求は、ほとんどがこの要求から来るものだと思います。ガーデニングに代表される「庭」を飾ると言うのも、このあたりの要求なのかもしれませんねぇ。


【その3 環境確保の為の庭】
これは隣接家屋との開きを設けたいと言った、風や光、密閉性を回避するために意識的に設けられた「隙間」と言ったほうが適当かもしれません。始めにこの要求がありきで、結果的にそこに木を植えたりしているだけなのです。建築基準法の採光確保の為の離隔距離からくる空地が、これに当たると思います。


【その4 内部空間と融合する庭】
例えば建物の平面プランを「コの字型」にし、中庭形式の部分も部屋として活用できるようにするのが、この考え方です。最近では、この内部と外部を有効に利用できるプランを選択する方も少なくは有りません。(だぶんに設計者の提案なのかもしれませんが)


日本のように一区画の敷地面積が小さい土地の場合、建物内部だけとか、建物外部だけと言った分けて考える考え方と言うのが、適切ではない場合もあるからです。極小地住宅やローコスト住宅と呼ばれるような建物には、外部との接し方として有効な方法かもしれません。


【その5 上記の考え方の複合的な庭】
多分、これが一番多いかもしれません。あれもこれもと詰め込んで「アンタ、結局何がしたかったの?」と聞きたくなるような庭が大多数を占めているでしょう。その結果、ひょっとすると何一つ満足のいく使い方が出来ず・・・・・いえ、それ以前に、そこまで庭に求めてないのかもしれませんねぇ。


それが証拠に空のビールケースや、使われていない植木鉢が積み上げられたり、無造作に置かれた物置などが散乱している家も見かけます。それは、もはや庭と呼べるような場所ではなく、ただのガラクタ置き場にしか過ぎません。「せっかくの場所が」と嘆かわしく思うのは、私だけなんでしょうかねぇ。


庭の造り方、考え方と言うのは「建物」と同じぐらい重要なんですが、どうもお座なりにされているのは残念です。建物を考えるとき、その庭の有り方、使い方も十分考慮に入れて頂きたいものです。きっと、その方がクリスマス・ツリーのイルミネーションも綺麗に飾れると思いますので。