今回はサイトのゲストから頂戴したメールのやり取りを、ご了解を得た上で掲載させて頂きました。ご相談と言うか、話題になっているのは「窓」の上に付く短い庇や雨戸の件なのですが、意外と同じようなご感想を持たれている方は多いのかもしれませんねぇ。
さて窓の上の庇の件ですが、これは「霧除け(きりよけ)」とか「小庇(こびさし)」とか呼ばれています。最近では、あまり重要視されていないかもしれませんが、個人的には結構大切なものなのだと考えています。
窓廻りと言うのは、大抵コーキングと呼ばれるボンドみたいな物で、雨水の浸入を防ぐべく防護しておりますが、このコーキングは永久的なものでは有りません。気温の変化や湿度・環境で劣化していく物です。
劣化したコーキングは乾燥収縮し、ピッタリと閉じていた口が開くように雨水の進入を許してしまいます。
そんな時に、窓の上にチョコンと付いている『霧除け』が有ると無いのでは、汚れ・防水、強いては建物の骨組みにまで影響するかもしれません。ですから設置できる場所、あるいは設置したい場所を明確にし、出来る限り設けられた方が良いと思います。
ただし!ただしです!この「霧除け」の形を上手に考えないと、どんな素敵な建物でも野暮ったくなってしまう場合があります。キチンとした設計者は、その辺りを充分配慮し考えて下さると思いますが・・・・・・そうでない設計者も中には居るかもしれません。
確かに窓の防水性能は一昔前と比べても格段と良くなりましたが、それでも建物の耐久性や汚れなどを考慮すれば可能な限り設置したい物です。
雨戸も同様だと考えています。今のアルミサッシュ一体型の既製品の雨戸の事を、多くの設計者は決してデザイン的に素晴らしい物とは考えていないと思います。ですから、そんな物を設置するぐらいなら、いっそ「付け無い」と言うふうに考えられてしまうのでしょうね。
例えば・・・「マンションの窓には付いてないでしょ?だから、ここも付けない」と言った具合にです。でもマンションの窓は、上部にバルコニーが有り直接雨が降りかかりませんよね?私も同じ設計者ですから、デザイン的な点から考えて、設置したく無いと言う気持ちは痛いほど解ります(苦笑)が、やはり何かは考えないとねぇ。
> 雨の多い、また台風も必ずといっていいほどやって来る日本の気候風土に
> 最近の家は適しているのかと疑問に思います。
素晴らしい!!!
その発想、あるいは疑問が「家を建てる時の大切な拘り」に、なるのでは無いでしょうか?そこから更に一歩進めて「そ
れじゃあ、何が?どんなふうにしたいの?」と考えていけると良いですね。
また「雨戸の設置」に対する問題点の一つに、建築基準法の防火地域の問題も有ると思います。住宅街の大抵の場所は、防火地域あるいは準防火地域と呼ばれる地域に指定されています。この地域内に建てる建物には、敷地の周辺から一定の距離にある開口部を、乙種防火戸にしなければなら無いと言う決まりがあるのです。
簡単に言うと、窓ガラスを針金の入ったガラス窓(網入りガラス)にしなければ成らない・・・と言う事です。
目的としては、住宅密集地における火災の延焼を防ごうと考えられたものなのですから、決して悪い事でも間違っているとも思わないのですが、実際にはI様だって、居間の履き出し窓が針金の入った網入りガラスだったら嫌じゃないですか?庭を望むのに透明なガラスに越した事は無いですよね。
そんな時の対応策の一つに、防火性能を持つ雨戸を設置すると言う方法も有るのです。防火性能を持っている雨戸を設置する事に拠って、窓は透明ガラスのままでOKと言う事なんです。ん?何か疑問がありますか???
「火事は雨戸を閉めている時だけに起こるとは限らない」ですって? うぅ~ん、私に言われても。
まぁ近所で火事があったら、逃げる前に雨戸を閉めて、延焼の防止に心掛けてください。で、万が一にも御自身の家が火事になったら・・・雨戸を締めずに逃げて下さい!命有ってのモノダネですから。
話が反れてしまいましたが、残念ながら今の雨戸と言うのは、その程度の扱われ方なのかもしれません。
> 本当のこと言うと、汚れやすいので窓拭きが大変なんです!
> おまけに、デザインも様々なので、未だに2階の窓(掃きだし窓以外)は外側から
> 拭いたことがありません。(恥ずかしい話)拭けないんです!
ご心配なく。たぶん皆さん拭いてませんから。良くて大掃除の際に、棒の先にモップの付いたような物で、気持ちばかり拭くのが精一杯だと思います。
窓って設計する時に難しい場所の一つなんです。私の場合は小さい窓を設ける事には、あまり悩まないのですが『大きな窓を設けてください』と言われると途端に悩んじゃいます。他にも手の届かないような高い場所に設ける電球とかも。
家を考えるのは一時の作業です。ですが掃除となると毎日の事ですよね、基本的には。
その辺りの事まで配慮する事って、なかなか大変かもしれませんが大切な事だとも思います。設計者のデザイン的な配慮にばかり捕らわれる事無く、住まれる方の現実的な配慮への対応を大切にしたいものですねぇ。
そうじゃ無いと、どんな写真写りの良い住宅も、ただの「設計者の我侭住宅」でしか無くなってしまいますからねぇ。うんうん、我が身も反省しよ~っと!ではでは。