近頃、「オープンハウス｣と言う言葉を、耳にする事がよくあります。これ簡単に言えば『住宅見学会』の事。新聞の折り込みチラシ・タウン誌は勿論、休日に街を歩けば、電柱に立て掛けられた『○×邸 住宅見学会はこちら』と言う、捨て看板を見付ける事さえ多くなりました。
このオープンハウス、もともとはハウスメーカーが始めた事じゃないかと思うのですが、最近は設計事務所・建設会社と、その業態を問わず行われているようです。ただし、その特徴がそれぞれ少しずつ違う事や、見学に行かれる方の目的も少し違うと言う事を、一体どれ位の方が気が付いているのでしょうか？
例えばハウスメーカーのオープンハウスは、『移動した住宅展示場』と言う印象が強いような気がします。街のあちこちに捨て看板を立て、「○×邸はこちら □△ハウス」と書くだけで充分に意味があるようです。たとえ住宅見学会に来なくても、会社の名前を堂々と告知することが出来るでしょ？
これを見て「あそこの住宅メーカーって人気があるのかしら・・・」なんて思わせる事が出来たら、それだけで充分ですからねぇ～。その上、見学会に来た人は、住宅展示場のモデルルームとは一味違った、リアリティー溢れる家を見る事が出来るので、メーカー側も営業しやすいって訳だと思います。
また、地域の建設会社などが行う見学会は、その建設会社が売りとする「工法や構造」を見せる事にあると思います。ですから、そんな建物の見学会に行く人と言うのは、建物イメージを見ることも然る事ながら
『○×工法ってどんなの？』とか『高気密住宅って、どんな感じなの？』と言う具合に、見る目的が明確だったりします。建設会社の方も、チラシやタウン誌を利用して、その辺りを上手に宣伝してますからね。
で、設計事務所のオープンハウスは？と言うと、これが実に地味だったりします。
まず新聞の折り込みチラシや、タウン誌などで告知しているのを見た事がありません！その上、捨て看板を立て「★☆邸はあちら」・・・・・なんて言うこともしない。ホントに地味にひっそりとしています。最近でこそインターネットを利用しての告知などを見ますが、それまではホントに見た事がありませんでした。単純に財政的事情だと思うのですけどね。
設計事務所の場合、一軒ごとに建物が違うでしょ。いや、形が違うとか大きさが違うとか、そう言うことじゃなくて、家を作る時のコンセプトが、それぞれに違うと言う意味です。だから木造の極小住宅もあれば、絢爛豪華な豪邸の場合もあったりします。（個人的にはそんな経験は無いですが）
工法も違えば構造だって違う。まして内装や建物のイメージは、一軒ごとに全て違うわけです。これはハウスメーカや地域の建設会社が造る建物とは、完全に違う特徴だと思います。
それじゃあ何を見せるのかと言うと・・・・・・・つまり『コンセプト』や『考え方』を見せているのではないかと思うのです。ひょっとしたら設計者自身の人柄や、考え方と言っても良いかもしれません。それはデザインがどうしたとか、色使いが・・・なんて事じゃなくて、『この建物を通して建築界に一つのアンチテーゼを・・・』なんて凄いデカイ事を大上段に振り構えているかもしれませんし、もっと軽いものかもしれません。いづれにしても他者の場合と、少しだけ違う事だけは確かです。
個人的な本心を言うと、自分の設計した建物をオープンハウスと称して、人様にご覧頂くのは、チョッと気が重いのも確かです。
なぜってオープンハウスと言うのは、家を施主へ引き渡す前に行われるのが普通です。だから万一、見に来て下さった方が室内を汚したり、傷でも付けたらエライ事。それを避けたいのは施主以上に、設計者自身だったりします。
万一、見学に来られた方のお子さんが、飴でもしゃぶりながら室内をウロウロされた日には、何年分の寿命が縮むことか。ですから見学に来て下さった方には、手袋でも嵌めて貰い、見学の注意事項を説明してから見て貰いたいのが本音ですが、実際にはそうもいきませんね。
まぁ、そんなに気を使うならオープンハウスなどやらない方が良いかなぁ～、なんて思うことも有るって訳です。（それでも時々やりますけどね）
話が反れちゃいましたが、各社各様のオープンハウスの考え方があり、見学者にもそれなりの思惑もある。どうせ行くなら、その家の特徴や拘った点などを、聞いてみたら良いと思います。それがメーカー住宅だろうと○×建設の家だろうと同じ事。設計事務所のオープンハウスなら尚更です。きっと話したくてウズウズしていると思いますから（笑）
ただボヘ～ッと見いても、なぁ～んの参考にもなりませんよ。今度オープンハウスに行く機会がありましたら、そこら辺を、よ～く考えて行って来て下さいね。くれぐれもお子さんに飴は食べさせないように。
余談ですがうちも、近日オープンハウスをやったりしますけどね。