Essay 171 三和土(たたき)

「土間のある家」を造っている。
最近は「古民家再生住宅」なんて言うのにも人気があるので、古民家に付き物の土間も、さして珍しくないかもしれないが、私にとってはタタミ4帖分の広さを持つ土間と言えば、やっぱり珍しかったりする。


そんな土間は古民家に限らず、全く新しい建物にも、一つのアイテムとして人気が高いようで、その造り方にも、いろいろな技や考え方があるようだ。


例えば「土間風な物」。これは厳密に言うと土間じゃなくて、つまり土じゃない物で代用する方法。具体的に言えば、モルタルなどに砕いた炭の欠片を混ぜ合わせ、黒っぽい土風(つちふう)の床を作る場合等がある。つまり「土」と言う材料よりも、「土間的空間」に拘った場合じゃないかと思う。炭の他にも色粉等を混ぜ、色鮮やかなモルタル床を安価で、お手軽に造る事も可能だ。


それから「土間は土間だけど、コジャレタ土間」・・・なんて言うのもある。
今回、土間を造るに辺り、「そもそも土間って何よ?」と言う至ってシンプルで、かつ初歩的な疑問にぶち当たったわけで、いろいろと情報を集めたら「お手軽!土間風キット」みたいな物を見つけた。


簡単に言えば、数種類の土やら何やらが混ぜてある「土間の素」が袋詰めされていて、これに水をチョイと加え、適当な柔らかさが出るまで、よーーーく掻き回す。で、それを床に塗ってはペタペタ叩き、塗っては叩くを繰り返せば出来上がり~!って感じのもの。
流石に既製品だけ有って、これはチョット洒落た感じの質感で仕上がる(値段もチョット高い)


ところが、この手の商品の場合、下地にコンクリートの床版が必要な場合が多い。なぜって土間キットの値段は高い。だから厚く塗るわけにはいかない。


それは冗談だが、兎も角下地にコンクリート版が必要な場合が多いのは事実。でも土間は土間な訳で、見える部分に関しては、モルタルみたいな質感とは全く違った感じで仕上がるって訳。


ところがヘソがチョイと曲がっている私の場合、ここで「はい、そうですか」とは納得しない。
「土間って地面と繋がっているから土間じゃないの?下にコンクリートがあったらダメじゃん!」なんて疑問がチラつく。


だから今回に関して言えば、上のどちらの方法も取らなかった。もともと土間と言うのは「赤土」と「にがり」、それに「石灰」や「水」を混ぜ合わせたものを叩いては塗り、また叩いては塗り重ねて造る物。だから土間のことを別名「タタキ」と言ったりする。もっとも漢字で書けば、「叩き」では無く「三和土」と書いて“たたき”と読む。


なんで「三和土」で「たたき」かと言えば、“赤土”と“にがり”と“石灰”の三つの材料が和を持って成すから「三和土」と言うのは私が勝手にこじ付けただけ。ホントは、なんででしょう?
ひょっとすると、良い土間を造るための3つの極意の意味なのか?


・根気よく叩く
・水平に造る
・適度な湿り気を保つ


なぁーんて感じか?・・・・・・・違うか?今度調べとこう。うんうん
まぁ、なんやかんやと言ってはいるが、実際の工事の際には、私も叩くことになると思う。と言うか、面白そうだから是非やりたいと言うのが本音だったりする。
きっと施主も叩きたいと思っているに違いない。あっ!施主と設計者、それに施工者
の三人が仲良く土間をピシャピシャ叩くから「三和土」なのかも?